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連載近田春夫の考えるヒット

ビジュアル系とは何だったのか? 紅白“歌合戦”に参加していないYOSHIKIと「芸能人格付け」のGACKT

2021/01/31
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YOSHIKIの“これぞロックンロール”

 面白かったのはYOSHIKIである。

2018年紅白リハ YOSHIKI ©️文藝春秋

 郷ひろみが楽しんでいるのならこちらは“ふざけてる”といったところか。

 持ち駒はといえば、結局は『ENDLESS RAIN』ひとつですし、そもそも本人“歌合戦”に参加していない……。

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 出場資格を考えると、結構微妙なものもあるでしょ? それがだよ! よくわからないが“枠”としては、もう超のつく世界的外タレの扱いですからね(笑)。

 とにかく——あの場面を作るにあたっての経費ひとつ取ってみてもゲストへのギャラだの何だのと番組のなかでも相当上位のものだろう——結果的にこの人以上に“手の届かない存在”的雰囲気を撒き散らすことに成功した、いい換えるなら“ミステリアス度で勝る”出演者は他にはいなかったのでは? という収まり方をしてみせてくれたのだから、いやお見事である。

 これぞロックンロールの真髄(笑)だと思った。

2017年紅白リハ YOSHIKI ©️JMPA

 こうなったらもう、本人と番組の命の続く限り(首の具合は心配ですけど)、予算になんぞ糸目をつけず、ますますの陣容の充実、絢爛豪華/けれんの極地に向けたパフォーマンスを、小林幸子/美川憲一の意志を継ぐべく、それこそ“ENDLESS”に繰り広げていって欲しい。そして願わくば『第九』にとって変わる日本の大晦日のアンセムとして普遍のものにまで昇華させていただきたい。

 例えばベルリンフィルを相手に、あのトレードマークとなったKAWAIのグランドピアノを携え、タクトを振るうYOSHIKIなんて、想像すればするほど観たくなるでしょう?

YOSHIKIとGACKT……ビジュアル系とは何なのか

 そしてついでにといってはナニだが、明けて正月には、『芸能人格付けチェック』におけるGACKT連勝の運命や如何に? に国民こぞって固唾を飲むという、このパターンを定着させられるか否か。

 ビジュアル系とは果たして何なのであったのか、2人のこれから先の活躍如何で、その音楽史的評価は大きく変わってゆくことだろうと思うのである。

2020年12月、イベントに登場したROLANDとGACKT ©時事通信社

 付記しておきたいのは、2人それぞれ、生活拠点をもはや国内には求めていないことである。案外その意味するところは大きいような気もしないではない。

 これが'21年。松の内もあけ、普通の日々に戻ったという今日この頃、改めて年末年始を振り返っての雑感である。

 あ、そうだ! 『調子悪くてあたりまえ 近田春夫自伝』の方もなかなかの好評とのこと、ここは是非ひとつご購入のほど、よろしくお願い申し上げる次第であります。

ちかだはるお/1951年東京都生まれ。ミュージシャン。現在バンド「活躍中」や、DJのOMBとのユニット「LUNASUN」で活動中。近著に『調子悪くてあたりまえ 近田春夫自伝』(リトル・モア)、『考えるヒット テーマはジャニーズ』(スモール出版)。近作にソロアルバム『超冗談だから』、ベストアルバム『近田春夫ベスト~世界で一番いけない男』(ともにビクター)がある。

調子悪くてあたりまえ 近田春夫自伝

近田 春夫 ,下井草 秀

リトル・モア

2021年1月28日 発売

ビジュアル系とは何だったのか? 紅白“歌合戦”に参加していないYOSHIKIと「芸能人格付け」のGACKT

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