昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

連載近田春夫の考えるヒット

2021/01/31

楽しみにしていた、郷ひろみによる追悼“筒美京平メドレー”が

 今回何より楽しみにしていたのが、郷ひろみによる追悼“筒美京平メドレー”だった。

2019年の郷ひろみ ©️時事通信社

 これは初期の大ヒット曲のオンパレードなのかいなと……。ネット上に記事を発見したときから、ここだけは是非とも観たいと思っていた。

 そのぐらいの気持ちにはさせられる前宣伝だったと思う。

インタビューでの筒美京平さん(1976年 ) ©️共同通信社

 それが、いざ蓋を開けてみれば羊頭狗肉とまではいわないまでも、メドレーといいつつたったの2曲! 編曲で意表をつくような演出ぐらいしてくれていたらまだよかったのにそれもなんだか中途半端。単に『男の子女の子』と『よろしく哀愁』のさわりを——繋ぐのでもなく——並べただけの工夫もない展開のうえに、司会陣のコメントも通りいっぺんのもので、全体に“さっさと片付けられてしまった感”の物凄く強いものだったのだ。

 この“仕打ち”には筒美京平ファンとして本当にがっくりさせられたのだったが、そのことと、これぞ“スターの自然体”とでもいおうか、郷ひろみが、なんともリラックスした身のこなしでつとめてくれた、俗にいう“お座敷”の価値は、また別の話である。

今でも様になる“はにかみ”の表情

 なかでもたまらなかったのが『男の子女の子』を歌いながらみせる、極々僅かながらの“はにかみ”の表情の、得もいわれぬほど様になっていたことで、その“チャーミングさ”は(俺がもとより郷ひろみの熱烈なファンであることで少し点が甘くなっているかも知れないにせよだ)きっと今回の紅白随一のものであったに違いない。

2010年の郷ひろみ紅白リハーサル ©️JMPA

 いや、還暦もとうに過ぎた男が、いくらデビュー曲とはいえ、こんな可愛らしい世界にどうすれば無理なく寄り添うことが出来るというのか? そんな難題にもサラリとこたえてくれたことをも含め、自身の現在の立ち位置を、プライドをもって肩肘張らずにアピールしているのが、画面からよーく伝わってきたのである。

 ふっと息を抜くことが出来たといったのは、何を隠そう実はこの郷ひろみの“余裕の笑顔”に接したときのことなのだった。

権威、重圧、或いは“諸事情”を軽やかなフットワークで受け止めて

 紅白という権威/重圧、或いは“諸事情”を軽やかなフットワークで受け止め“ゆとりのパフォーマンス”で返してみせるその姿に——リキ入り過ぎのシリアスな歌唱ばかりが続くショーにいささかくたびれもしていた——私は、「あ、この人は紅白出演を俯瞰の視点で楽しんでいる」。気の利いた/粋な遊び方してるなぁと気付くと、何だかフッと“楽な気持ち”にさせられたのである。

郷ひろみ ゴウヒロミ 2018紅白歌合戦リハーサル2日目 ©️文藝春秋

 と、まぁ、それはそれ。いずれにせよ、この結構おざなりな追悼コーナーの作りに、いち視聴者としては紅白歌合戦観覧のテンションが落ちてしまったのだから仕方がない。ここからあとは、ただTVをつけていたぐらいの感じで、とりたてて画面を見入ることもなく時間が過ぎて行ったのだが、それでもアレコレ考えることはあった。