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結婚前に集団レイプされる女性も

 ここで元国際結婚斡旋業者は、ひとつ大きく息を吐き、声を落として続けた。

「中国側の業者の中には我々日本人には想像もつかない悪質な業者も少なくない。買い取った娘が美人だったりすると仲間数人で集団レイプまでしてしまうんです。そうやってさんざん弄んだ上で、女性に因果を含め、純朴な農村出身の花嫁に仕立てあげ、日本男性に嫁がせるという寸法です。従って日本に来たときには精神的に壊れる寸前の女性もいて、結婚生活というより、心のケアが必要な場合もあるのです」

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 買い取った女性は彼らにとって大事な商品なのだろうから、そんなことをして、見合い相手の日本男性に見抜かれ商品価値がなくなってしまったらどうするのか? と私が問うと、こんな答えが返ってきた。

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「国際市場で駄目なら国内市場で捌く、というのが彼らの考え方です。中国の農村部は、日本の農村以上の嫁不足で、誘拐してきた女性を兄弟2人の共同の嫁にしていたなどという事件があるほどです。だからレイプされて少し精神的に不安定になっていても、性欲を満たし、多少の労働力になってくれれば、それでOKなんです。また最近はミャンマーなどよその国の少女たちまで誘拐、売買するグループも増え、東南アジアの国々では中国人犯罪グループの暗躍に頭を悩ませています。結局、愛だの恋だのという観念は、ある程度の豊かさの上に成立するものなのですよ」

根底にある中国農村部の貧困と戸籍システム

 呆然とするような話だ。もちろん一方で、ごく普通の真面目な国際結婚斡旋業者も数多く存在する。ただそうした一般的な斡旋業者の存在も中国農村部の貧困という問題を抜きには考えられない。

 中国農村地帯の平均年収は7万円前後。中堅都市の一般人の年収が20万円前後ということを考えるとほぼ3分の1。北京、上海などの大都会のエリートビジネスマンともなれば年収が60万円から70万円だから、その人たちと比較すると10分の1だ。こうした格差は詩織が日本に来たころは、もっと大きかったはずだ。

 そして、この絶望的な貧困から、農民が脱出する事を阻んでいるのが、前述した中国独特の戸籍制度なのだ。

中国人「毒婦」の告白

田村 建雄

文藝春秋

2011年4月20日 発売