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 ただ、そこまで「モテ」についてこじらせずにすんだのは、中学から大学附属の私立に入ったことが大きい。中学・高校が同じ学舎だったので、狭い教室から飛び出してしまえば、中1の自分も高校生のフロアを自由に行き来できた。さらに制服も中高統一だったため、パッと見、学年はわからない。同級生がダメならガタイの良さを活かして大人っぽく装い、高校生と恋愛すればいいだけの話だった。

 高校の時に日本製の「ワコール」ではなく「ヴィクトリアズ・シークレット」(アメリカの大手下着ブランド)を愛用していたのは、アメリカサイズの中では自分が小さいと思えたし、いい感じのデザインが手に入ったから。

 息苦しさを感じたら、呼吸が楽になる場所を探して移動する。自然とそんな嗅覚や筋肉が鍛えられた。

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一番右端が筆者。この時、中学3年生で166cmだった。

 今ではSNSで定期的に「高身長あるある」が披露されていて、「悩んでいるのは自分だけじゃなかったんだ!」と思えるようになったが、かつては自分も以下のような言葉をよくかけられた。

・なにかスポーツやってたんですか? (やってない)
・運動神経良さそうですよね (手と足が一緒に動くレベル)
・スタイル良くて羨ましい (背が高いだけ)
・しっかりしてそう (自分のことくらいはやる)
・酒強そうだね (好きだけど強くない)

 特に下の2つには、心がざらつく。

お前は女として圏外だから

「しっかりしてるね」は、小さい時から本当によく言われた。これは自分がしっかり者だというより、大きな図体から漂う“姉御感”を、周囲が“しっかり者”という言葉に変換して伝えただけだと思う。

 それでも周りから「しっかりしているね」と声をかけられ続ければ、「そうあろう」としてしまう。結果、誰から頼まれてもいなければ期待されてもいないのに、「私がこの場を盛り上げなくては」とか「今ここで自分が手を挙げなければいけない」などという、非常に無駄な責任感を背負うことになった(そして大抵、失敗する)。

「酒強そうだね」は、キャバクラや飲み屋でバイトをしていた時、男性客からよく言われた言葉だ。私はまったく人気がなかったので、たいていヘルプとして席につく。売れっ子の本命が席につくまでお客さんの相手をさせてもらうわけだが、私を一瞥したおっさんの多くが、「君ガタイいいね〜。運動してたの? 酒も強いんでしょ」とくる。そういった流れの中で聞く「酒強そうだね」は、イコール「お前は女として圏外だから」に聞こえたし、実際、圏外だったから指名もされなかったのだろう。