身体的なコンプレックスがお金で解決できるようになってきた。毛深いのが悩みなら永久脱毛が可能だし、顔のシミをレーザーで取り去った友人も少なくない。歯並びに悩んでいた自分も、上下の顎の骨を切って噛み合わせごと整えるという大掛かりな矯正を始めたばかりだ。

 それでも。カジュアルに見た目をアップデートできるようになった現代でもどうにもならないのが、「高身長」だ。低ければカサ増し対応できるが、大きい身体を折り畳むことはできないから、高身長に悩む人々はそのサイズを持て余し、途方に暮れる。

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 1983年生まれの私は168cmの女である。日本の成人女性の平均身長は約158cmだそうだから、高身長の部類だ。実際、日本女性の身長を調べて「158」という数字が出てきた時、「それな!」と声を張り上げそうになった。

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死ぬほど憧れた「158/48/23.5」

 デカめの女として30年余を生きてきた自分は、かつて「158/48/23.5」に死ぬほど憧れた。周りのかわいい女の子は皆おおよそ、「身長158cm/体重48kg/足長23.5cm」だった。かたや自分は「168/58/24.5」。なにもかもが他の子より一回り大きく、重い。プリクラや写真を見る度、デカい自分を忌々しく感じた。

保育園の頃。右から3番目が筆者。右手の二人は同い年なので、その差がわかる。

 はじまりから大きめだった。共に昭和30年生まれの父母は175cmと164cmで、兄は190cm。サイズ感は遺伝だろう。実家に小柄な友人が遊びに来ると縮尺が狂ったように感じた。

 赤ちゃんの時の写真を見ても、月齢が上の子より自分のほうが明らかにデカい。幼少時は男の子より大きかったし、母は私にボーイッシュな服を好んで着させ、髪を伸ばしたこともなかったので、自分の中で「男:女」は本当に対等なものとして並んでいた。その証拠に年長の時、母に「男と女はどちらが力持ちか」みたいな質問をした際、「男の子だろうね」と言われて腰が抜けるほど驚いた記憶がある。

 やがて小学生になると、もしかしたら高身長女子の方には多いことかもしれないが、他の女の子より早く初潮がきて、胸も成長しだした。異性が気になるようになったのも同じ頃。でも、クラスで人気があるのはだいたい「158」級の女の子で、「168」級の自分は同級生の男子たちの眼中に入っていないようだった。

 周囲より一足早く「女」になっているのに、男からは「女」としてカウントされない自分が悲しかった。この寂しさは高校卒業まで続いた。