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 まず、大原則として「認知症を見て見ぬふりをしないこと」です。

 認知症により判断能力の低下した高齢者との契約は、そもそも法律上、無効である可能性があります。また、仮に無効でない時でも、金融商品や不動産取引など、内容が難解で若い人でもすぐには理解が難しいような契約の場合は、企業側の説明を顧客が十分に理解できないまま契約が行われることによるトラブルのリスクがあります。

 そのため、顧客の認知症が明らかな場合や、認知症が疑われる場合には、漫然と契約を進めるのではなく、一旦手を止め、顧客の判断能力についての把握や、契約の妥当性について再検討する必要があるといえます。

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 そして、それを実現するために最も重要なことは、これらのトラブル防止策について、会社側がきちんと手順を決め、それを職員に徹底させることです。

ルールの整備は最低条件

 一見当たり前のことを言っているように思えますが、かんぽ生命の例でも、それが十分にできていないことからトラブルが生じています。

「高齢者の取引における社内ルールを作っています」という対策はよく聞かれますが、実際に、職員が契約の現場で社内ルールを破らない・破れないようにする仕組みが弱ければ、不正は防ぐことはできません。実際に、社内ルールを整備していたにもかかわらず不正が起き、裁判の過程で「ルールが形骸化していた」ことを指摘されている判例もあります。このような場合には、「会社としてルールを作るなどの対策をとっていた」という主張が通らず、結果として会社側の責任が問われることもあるでしょう。

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 つまり、企業がすべきこととして、判断能力の低下した人や認知症の人との取引に関するルールの整備はあくまで最低条件であり、その上で、職員が不適切なトラブルを起こさないようにどうすべきか、という仕組みづくりをしておく必要があるといえます。

 以上をまとめると、ビジネスチャンスを失わずに、企業として認知症とお金の問題に備えるには、まず、自社が抱える認知症リスクの洗い出しから始める必要があります。例えば、顧客が認知症だった場合、どのような点で問題が起こりうるか、ということを過去の事例などを元にリストアップすることなどがそれに該当します。その次に取り組むべきは、そうした問題を回避するための仕組みづくりです。その仕組みには、顧客の認知症や意思能力の有無を把握するプロセスを取り入れること、認知症を見て見ぬふりをするような不適切な行為をする職員が出ないようにすること、が必要です。

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家族の財産を認知症からいかにして守るのか。より具体的な対策については以下の書籍で詳しく紹介しています。ぜひご覧ください。