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契約者は「ゆるキャラ」「半ボケ」…日本郵政が高齢者をカモにする“不正契約”に手を染めた理由

『国富215兆円クライシス 金融老年学の基本から学ぶ、認知症からあなたと家族の財産を守る方法』より

2021/02/26
note

報告書に羅列された原因分析

【職員個人の問題】

・一部の職員は、モラルに欠け、顧客第一の意識やコンプライアンス意識が低く、自己の個人的な利得等を優先する職員が存在した。

【企業としての問題】

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・不適切販売を行っている職員に対して実効的な研修や教育、指導に関する取組を組織的に行ってこなかった。

・郵便局等の営業目標達成のために、不適切販売により高実績をあげている職員に依存し厚遇してきたため、不適正な行為も黙認されるという風潮が形成された。

・不適切販売の手法を共有する自主的な勉強会に対し適切な対応を講じなかった。

国富215兆円クライシス 金融老年学の基本から学ぶ、認知症からあなたと家族の財産を守る方法

【不適切販売が広がった直接的原因】

・叱責や居残りなど、営業目標の管理が厳しく、適正な販売よりも営業目標が重視される風潮があった。

・新規契約を獲得すると手当をもらえるといった、新規契約重視のシステムになっていた。

・営業目標の設定において、一部、実力に見合わない過大な営業目標が課されていた。

・養老保険や終身保険の加入年齢の引き上げを行うなど、高齢者を対象とする経営目標が設定されていた。

・不適切販売の疑いのある職員に対する徹底的な調査や処分が行われてこなかった。

【不適切販売が広がった構造的要因】

・審査の手続きの中で、不適切販売を防止するための手続きや仕組みが組み込まれていなかった。

・販売や乗り換え契約におけるルールに不備があり、グレーゾーンができていた。

・かんぽ生命から販売代理店にあたる日本郵便(郵便局)側の統制が弱かった。

・顧客に不利益を与え得る不適切販売の実態が長期間把握されていなかった。

・不適切販売のような「悪い情報」を見つけても上司に報告しない、あるいは報告を受けた側が行動に移さず経営層に情報が届かないなど、事なかれ主義の組織風土があった。

 以上のような内容となっていました。

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 それぞれ相互に関連している部分もありますが、これだけ多数の不適切事例に至った原因としては、個人の問題というよりも、組織側の問題が大きかったとみられます。

 過大な営業目標、手当ての偏り、不適切販売を防止するルールの不備、不正行為に対する処分の不徹底などは、職員個人によるものではなく、全て会社が作った要因です。「一部の不良職員がやったことです」と言いたい幹部もいるかもしれませんが、これだけの数の不適切販売が行われていることからも、批判は免れないでしょう。