「ゆるキャラ」「半ぼけ」「甘い客」
同委員会の報告書によれば、「不祥事件届出事案(筆者注:法令違反のあった事例)のうち、高齢者が契約者や手続者等となった事案が4割以上を占めており、乗換契約の場面において生じた不祥事件に限れば、高齢者に対する保険募集の事案が半数以上を占めていた。」とされています。これは、不適切販売のターゲットとして判断能力が低下した高齢者が、ターゲットにされやすかったのではないかと推測されます。
そして、これらの被害に遭った高齢者の中には、診断こそされていないが認知機能が低下している「隠れ認知症」も多く含まれていたと考えられます。朝日新聞の取材によれば、契約を結びやすい高齢者を「ゆるキャラ」、「半ぼけ」、「甘い客」などと内輪で呼び合い、不要な契約を複数結ばせていたなどの実態も明らかになっており、判断能力が低下した高齢者や認知症の人をターゲットとした不適切販売が常態化していたとみられます。
また、同年、ゆうちょ銀行においても、70歳以上の高齢者に対し、健康状態や商品の理解度を確認せずに、不適切な形で投資信託の契約を行った事例が19591件に上っていたことが明らかになり、かんぽ生命の不適切販売問題と合わせて話題となりました。
国民にとって身近な存在であった郵便局・ゆうちょ銀行において、こうした多数の不適切な事例が明らかになったことは大きな衝撃です。いったいなぜ、このような不適切事例が多発してしまったのでしょうか。
「現場がやったこと」では済まない
当然ながら、日本郵政グループは、詐欺行為・違法行為を奨励するような反社会的企業ではなく、大多数の従業員は日々真面目に勤務をしていますし、社長をはじめとした経営層の判断としてこのような不適切事例を推進していたわけではないでしょう。では、なぜ、このような事態となってしまったのでしょうか。
特別調査委員会の報告書では、こうした不適切販売が多数発生した原因について、職員への調査なども行いながら分析しています。原因分析の章だけで10ページもあるため、細かく紹介しきれませんが、簡単にまとめると、次のようなことが書かれていました。