【1】「出所したら高齢組員ばかり」は本当か?
まず、14年の刑期を終えた山本が出所して驚かされたのが、柴咲組から若い衆が消えていること。残っているのは、長老格の舎弟頭ら数人の高齢者だけになっていたのだ。
現実の世界でも組員の高齢化は進んでいる。現役の指定暴力団幹部が明かす。
「いまは組から離脱する若者が多い上に、ヤクザになりたいという若い者がいない。ヤクザ社会も少子高齢化で、組の中も年寄が多くなっている。そのため、最近は新型コロナ感染の心配もあり、会合などはほとんど中止。密になったら危険だからだ」
山本が刑務所にいる間に何が起こったのか。その間、暴力団をめぐる法規制で資金源を断たれ、衰退へと向かっていたのだ。
ヤクザ業界に大きな影響を与えたのは、2011年までに全国で整備された暴力団排除条例だ。
1992年に施行された暴力団対策法でも、暴力団が繁華街の飲食店などからみかじめ料と称するあいさつ料や用心棒代の徴収を禁じていたが、その影響には大きな差があったという。前出の暴力団幹部が解説する。
「暴対法も影響がない訳ではなかったが、活動が大きく制限されることはなかった。みかじめ料を徴収しても、いきなり逮捕されるわけではなく『中止命令』で終わることが多い。『中止命令で済むなら……』という程度の受け止めだった」
それが、暴排条例となると、法人や個人が用心棒代などの利益を暴力団側に供与することまで禁じられた。勧告に従わない悪質な場合は、企業名が公表されることもある。暴力団との関係が明らかになれば、銀行取引が停止されることもありえる。企業などにとっては、暴力団との付き合いを断ち切らなければ、その存続さえ危ぶまれる事態となるのだ。
暴力団犯罪の捜査を長年にわたり続けてきた警察当局の捜査幹部が指摘する。