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“伝統芸”のはびこるニッポンに「透明性の大切さ」を問題提起してくれて「#森喜朗さんありがとう」

“伝統芸”のはびこるニッポンに「透明性の大切さ」を問題提起してくれて「#森喜朗さんありがとう」

2021/02/16
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 今回の森喜朗氏の「女性がいる理事会は時間がかかる」発言。これを報じたメディアやネットに対し発言の“切り取り”と主張する人もいる。果たしてそうなのか?

「異様な国」という印象を与えた日本

 産経新聞は一面で次のように書いた。

《「森氏の発言の一部を切り取った批判」といった擁護論もあるが、発言全体を読めば印象はさらに悪い。》(2月13日)

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 森喜朗が勤めていた産経新聞も叱っている(一面の特別記者コラム)。

 全文を読んだらさらに酷かったというお約束の森喜朗節が今回も炸裂。

森喜朗氏 ©️文藝春秋

 さらに産経コラムは森だけでなく事態収拾に腰が引けた菅政権、間違いを正すことに対する組織委やスポーツ界を含めた社会の腰の重さ、これら複数の要因で「異様な国」の印象を与えてしまったと書く。

 森喜朗を考えることは日本の政治や社会を考えることでもある。「異様な国」では困る。

未遂で終わった「密室での後継指名」

 その異様さは川淵三郎への後継指名でも可視化された。差別を批判されて退場する当人が指名。しかも相談役で残る?

川淵三郎氏 ©️文藝春秋

 読売新聞は一面で「混乱を招いた森氏本人による『密室での後継指名』という印象がぬぐえない」と指摘(2月12日)。この計画は白紙となった。

 森と森周辺の閉鎖性を具体的に暴いたのはスポーツ報知。

『「組織委員会」は名ばかりだった「何をお前は言っているんだ」意見一蹴…森会長辞任の舞台裏』(2月12日)

 複数の組織委理事が、森会長による理事会が機能していなかった実情を明かしたのだ。理事会は意思決定機関のはずなのに会議の残り5分くらいで出席者に「何かありませんか?」と声がかけられることが多かったという。そんな短い時間では議論には至らなかったと理事は証言。

 発言したら森会長から一蹴されたこともあった。

《ある理事は「何をお前は言ってるんだ、と言わんばかりの威圧的な雰囲気でした。その後、理事会で異論を言う人はいなくなったように思う」と振り返った。》(同)

 この閉鎖性は、森喜朗の「(女性理事は)わきまえておられる」発言と川淵三郎への後継指名に見事にそのままリンクするではないか。

 なのに本人は「解釈の仕方。多少、意図的な報道もあったと思う」と辞任表明会見でまだ言っていた。毎日新聞は「なぜ批判されたのか、最後まで理解しているようには見えなかった」(2月13日)。