――『モルカー』は地上波の子ども向け番組で放送されることになりましたが、『マイリトルゴート』を生み出したダークな作家性が強く出すぎてしまう懸念はありませんでしたか?
杉山 そういう心配はありませんでした。まれに自分の色を出すことに一辺倒な作家さんもいますが、見里監督はこちらからの要望を、打ち合わせの段階からうまく咀嚼してくれている様子でしたからね。実際コンテが上がってきたときは、ご自身の作家性を子ども向けで表現するにはどうすればいいのかを真剣に考えてくれたんだな、と感じました。
――ネット上のファンたちの間では、モルカーが可愛らしく描かれれば描かれるほど劇中の人間たちの愚かさが際立つ、といった感想もよく見かけます。それは見里監督が自身の持つダークさや強烈なメッセージ性を、あえて少し漏れ出させた結果なのかもしれませんね。
杉山 そうですね。実は『モルカー』という作品を監督が思いついたきっかけのひとつに、現実社会における「あおり運転」問題があったようです。監督が『モルカー』の企画を思いついた2年ぐらい前は、ちょうど「あおり運転」の報道が多かったですよね。そういった事件を見ていて、「運転中にイライラしても目の前がモルモットのお尻なら気持ちが和らぐだろうになぁ」なんて考えが監督にはあったそうで、第1話『渋滞は誰のせい?』はそんな想いが反映された内容になっていますよね。
新進気鋭の見里監督ならではの“こだわり演出”の秘密とは?
――制作過程で杉山さんが感心された見里監督のこだわりなどはありますか?
杉山 企画のGOが出てから、見里監督がモルカーの試作のぬいぐるみを何個か作ってきてくれたことがあったんですよ。それが、例えばほっぺたを押してもすぐに形状が戻ることなく、うまい具合に押された形状のままでしばらく止まるようになっているんですよ。中に針金とか絶妙に入っているそうなんですが、だから繊細な悲しい顔や焦った顔を作ることができるんだなと感心しました。