――映像で見るとモルカーたちはふわふわ弾力があるように見えますが、実際は撮影がスムーズにいく仕掛けがたくさんあると。
杉山 あとはコンテを読んでいてその世界観の作り込みにも感心しましたね。第3話の『ネコ救出大作戦』の冒頭で、炎天下にモルカーたちが駐車されているんですけど、シロモというナイーブな性格のモルカーだけは屋根の下に駐車してもらっているわけです。さりげなくドライバーとの良好な関係性が描かれているんですよ。さらにさかのぼると、第2話の時点で、シロモを駐車した後にドライバーがレタスをあげるシーンもあるんですよね。
人間とモルカーは所有者・所有物という関係ではなく、飼い主とペットに近い関係性で描かれているのが微笑ましい。これは見里監督自身がモルモットを飼っていて、その可愛さや関係性を作品に落とし込みたかったからなのかな、なんて思います。モルカーの鳴き声も実際のモルモットの声から収録したようですしね。でも一方で、シロモのドライバーのような優しい人間だけではなく、モルカーをそれこそただのモノとして、愛情もなく雑に扱う人間も出てくるわけです。考えさせられる描写が多いんですよ。
ハリウッド映画さながらの視聴者の度肝を抜いたシーンも
――ストーリーの組み立てもさることながら、『モルカー』はアクションの演出も巧み。第8話『モルミッション』では、ハリウッド映画さながらのヘリコプター墜落シーンで視聴者の度肝を抜いた印象がありました。
杉山 あれすごいよねぇ。見里監督は人形を動かして命を吹き込む表現へのこだわりもさることながら、煙やら炎を表現することにも強いこだわりがあるみたいですね。子ども向け番組でやっていいのか、と思った視聴者さんもいるかもしれませんが、当たり前ですがテレビ東京からもしっかりOKをもらってやってます(笑)。
――確かに、子ども向けにもかかわらず、びっくりするモチーフやストーリーもありました。第6話の『ゾンビとランチ』でグッと監督の好みが出て来た印象がありますが、エグゼクティブプロデューサーである杉山さんとしては、監督の趣味・趣向に偏りすぎないようにといった調整で苦労することもありそうですね。
杉山 いや、ほぼないですよ。確かにコンテを最初に見たときはびっくりしましたけどね。え、ゾンビやるの!って。だから「子どもが観れるレベルでね」とか、「メッセージ性が強すぎるからもう少しマイルドにしたほうがいいかもね」くらいの話はしましたが、修正の指示したのはそれくらいですよ。