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2021/02/20

source : 文春新書

genre : ニュース, 国際, 社会, 読書

 出産の2日後、ようやく生まれた男の子のお披露目が行われた。場所はウィンザー城内の豪華絢爛な広間。撮影を許されたのはイギリスメディアの代表カメラだけで、私たちは現場に入ることもできなかった。

 これまでのお披露目では、母親が赤ん坊を抱いていた。キャサリン妃もダイアナ元妃もそうだ。しかし今回男の子を抱いていたのは母親のメーガン妃ではなく父親のヘンリー王子だった。王室の慣例を破ったのは、フェミニストとしてのメーガン妃のメッセージなのだろう。一瞬だけ男の子の顔が見えたが、帽子をかぶってすやすやと眠っていた。

「形式張った王族に育てたくない」という考え

 男の子は、アーチー・ハリソン・マウントバッテン=ウィンザーと名付けられた。マウントバッテン=ウィンザーというのは現在のイギリス王室にとっての名字である。

 一方のアーチーとハリソンというのは、イギリス王室にとってなじみのない名前だった。イギリス人スタッフは「ハリソンといえばハリソン・フォードだよね。なんかアメリカ人っぽいよねえ」とか、「ハリーの息子(ソン)だからハリソンにしたんじゃないか」などと冗談を言っていたが、BBCによるとやはりイギリス王室には珍しい名前であり、「形式張った王族に育てたくはないという意向を強く示すもの」だという。

 また「王子」という称号も与えられなかった。そのため、いとこであるルイ王子とは異なり、アーチーくん、と呼ばれることになる。

©iStock.com

「形式張った王族に育てたくない」「王子の称号はいらない」という考えは、いかにも2人らしく素晴らしいと思う。しかしそれなら、なぜわざわざお披露目をイギリス王室が所有する建物の中でもっとも王室らしいウィンザー城の広間で、しかも一部のメディアだけに対して行なったのだろうか。病院前で大勢のメディアや一般市民にお披露目し、祝福の言葉を受けたダイアナ元妃やキャサリン妃の方が、よっぽど「庶民に近い王室」というメッセージが伝わってくる。

セレブ御用達のプライベートホスピタルでの出産

「まるで魔法のようで本当に素晴らしいです。世界で最高の男性2人に囲まれて、とても幸せです」

 満面の笑みでそう語ったメーガン妃を見ながら、私はなんとなく冷めた気持ちになっていた。

 その9日後。秘密とされていたメーガン妃の出産場所が、アーチーくんの出生証明書から明らかになった。出産場所はロンドン中心部のポートランド病院だった。ヴィクトリア・ベッカムが出産した病院でもあり、出産費用は最低でも1万5000ポンド(約225万円)というセレブ御用達のプライベート・ホスピタルだ。

 出産場所を隠したのは「セレブ出産だ」と批判されるのを避けるためだったのだろう。私はもはや驚かなかった。

 2人のこうした振る舞いは、一般国民もよく思っていないようだ。