「最近は変わってきているが、昔は『その程度の不始末で詰めるのか』というぐらいに、問題があると何でもすぐに指を切っていた。だから、指が何本もないヤクザは結構いる」
本人の不始末のけじめの付け方として語られる指詰めだが、この幹部はそう単純ではないと指摘する。
「例えば兄弟分にあたる人物に不手際があり、連帯責任ということで自主的に申し出てやるということもある。さらに、自分の組の若い衆の不始末について、指導が行き届いていなかったことを詫びるということもある」
警察は「指詰め」をどう見ているのか?
では、警察当局の現場では、ヤクザの指詰めは、どのように捉えられているのか。
長年にわたり組織犯罪について捜査を続けてきた警察当局の幹部は、「指がないヤクザは信用することができる場合が多い」と打ち明ける。
「指を自ら切断するということは一般社会からは異常な慣習。しかし、暴力団の世界では、不始末に対して責任を取って指を詰めて、筋を通すことができた『一本気な人物』と評価される。実際にそういう男は、警察に対してもウソをつかない。いい加減なヤツは問題が発覚しそうになるとすぐに逃げるが、指を落としている者はそういうことはしない」
もちろん、別の見方もある。多くの暴力団犯罪の捜査を指揮してきた別の幹部は「一概には言えないが、何本も指を詰めているのは、それだけ危ないことをやってきたということだ」と、全く逆の見方を示す。
総会屋でも「指詰め」の制裁があった
かつて「反社会的勢力」として暴力団同様に警察当局の最重要捜査対象となっていた総会屋グループでも、指を切断するという厳しい制裁が加えられたことがあった。
総会屋とは、上場企業の株式を購入し株主となって、株主総会に乗り込み質問攻撃を繰り返して経営陣に揺さぶりをかけていた団体だ。現在でこそ、ほぼ活動実態はないが、バブル崩壊後、企業から総会屋へ資金が流れていたことが発覚し、利益供与容疑で企業の担当者とともに総会屋が逮捕される事件が相次いでいた。