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2021/02/24

source : 文藝春秋 digital

genre : ニュース, 社会

黙っておくのが正解という空間

 東さんのSNSには、時にこうした発言に対して「現場を見てから言ってくれ」といった批判がやってくる。「医療現場に精通している」というポジションから、「現場を知らない知識人」を批判することで、前者には賞賛も集まり、後者は「机上の空論」というレッテルを貼られる。

 ここ数年はその傾向が強まり、「部外者」は黙って、物事をよく知る専門家の言うことを聞けばいいという空気が強くなっている。派手な発言や提言をする専門家の周囲には、専門家の「代弁者」のような人たちも群がり、一種のファンコミュニティも出来上がる。彼らを刺激する発言は、耐えず批判にさらされる。その結果、生まれるのは、よほどの強者ではない限り、黙っておくのが正解という空間だ。

 当然ながら「現場」も一枚岩ではない。ファンコミュニティの弊害は、多様な現場の声も言いづらいものにしてしまう空気の醸成にある。その一例を示そう。

「つくづく、日本は運がいい。第1波と同じで、医療体制を大きく変えなくてもいいと思うんじゃないですかね。社会への脅しみたいな訴えでは限界があるのに……」と語ったのは、まさに新型コロナ患者をずっと相手にしてきた、「現場」の最前線にいる医師だった。

 

「日本は運がいい」の根底にある強い使命感

 これは東さんの考え方と共鳴する発言である。目の前の感染者抑制と、最前線の治療、平常時ではない—私はコロナ禍を「災害」と捉えたほうがいいと考えている—医療体制整備は両立する課題だ。

「日本は運がいい」の根底にあるのは、現場から見ていても現状の医療体制には限界がある以上、今の段階で早く議論を進めて、第4波、ひいては次のパンデミックに備え、長期的に患者数増加に耐えられる体制づくりの方向性を示さないといけないという強い使命感だったように思える。