読売「舞台裏・検証」の舞台裏を推理する
ところが。
この毎日新聞と同日の読売新聞が興味深い動きをしていた。
「舞台裏・検証」という記事である(9月26日)。
「来年末の衆院選を模索していた首相が、早期解散に踏み切ったのはなぜか。舞台裏を検証する」という、よくあるドキュメントタッチの読み物。
ここに何が書かれていたか。
読売の「舞台裏・検証」によると、首相がひそかに指示していた衆院選の情勢調査の結果が9月10日に届いた。自民党は12~30議席減らすが、単独過半数は維持する。
この結果を見て、首相はその夜に麻生副総理兼財務相を急きょ私邸に招いた。そこで麻生氏に次のように言ったという。
《再来年10月の消費増税分の使途変更を大義に掲げ、早期に解散したい。協力してもらえないか》
ん……?
この文章を読んで何か違和感がないだろうか。首相が麻生氏に伝えた言葉だというのだが、「読者」に説明しているような感じを受ける。
消費税使途をめぐる「9月10日発言」と「9月12日発言」の怪
この発言があったとされる日付にもう一度注目してほしい。「9月10日」の夜である。繰り返すが、読売によればこの日には消費増税分の使途変更を大義に掲げることを決めていた。
日経新聞に《消費増税分の使途を見直し、教育無償化などの財源に充てることには慎重姿勢を示した。》と書かれたのはいつだっけ?
そう、9月13日である。首相インタビューは前日の12日。
9月10日の時点で「消費増税分の使途変更を決めていた」(読売)のに、その2日後の日経のインタビューでは使途変更には慎重な態度だったことになる。首相はとぼけていたことになる。
新聞と安倍政権の遠近感
これが北朝鮮訪問など、情報を直前まで出さずにおきたい件ならわかるが、消費税の使途変更について情報を隠す必要があるとは思えない。これで解散をしたいならむしろ爪あとを残すはず。
つまり、読売は「舞台裏・検証」というドキュメントタッチにしながら、現在各方面からツッコまれている首相の解散の「大義」は決して後付けでなく「解散を決意した最初から(9月10日の時点で)考えていた」と読者に説明しているように見える。
新聞とは情報戦でもある。ならば安倍政権と近いのか遠いのかを頭に入れておくだけでも各紙の記事は意味が出てくる。この読売の記事が良い例だと私は思う。
情報戦を楽しもう。