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2021/02/27

genre : ライフ, , 娯楽, 社会

エンジン式ボートでいざ出発!

 事前に予約しておいたレンタルボート屋で料金を支払うと、まずはボートの操縦法についての説明を聞いた。私は今まで、遊園地にある白鳥の形をした、足のペダルで漕ぐタイプのボートしか動かしたことがなかった。だが、目の前にあるのはエンジン式のボートだ。

 そんなものを動かすのは初めての経験で、しかも湖では一人で操縦しないといけない。そのため説明はしっかり聞いたが、どうやら操縦方法はそれほど難しくなさそうだった。エンジンを起動する際の操作や、エンジンがかからない時の対処法についても、詳しく教えてくれた。

レンタルボートでいざ出発!

 どうしてもエンジンがかからなくなった時のために電気式のスクリューも積まれていて、いざとなったらこれを使うようにとも言われた。振り返ってみると、説明の大半は「エンジンがかからなくなった時の対処法」だったのだが、この時点では特に疑問に思わなかった。

 説明が終わると、いよいよ救命胴衣を着用して、定員2名の小さなボートに乗り込む。エンジンを始動し、いざ出発だ。

いきなりトラブル発生

 ボートは勢いよく滑り出し、湖上に波を立てながら進んでゆく。慣れない操縦ではあるが、ボートの向きを変えるのは思ったより簡単で、少しずつ要領も掴むことができた。所々にある立ち木の障害物を避けながら、ボートを進める。夏の暑い日で日差しは強かったが、湖上で感じる風は、とても心地よかった。

 そうして10分ほどのクルーズを楽しんでいると、ついに目的の発電所跡が見えてきた。エメラルドグリーンの湖面に、灰色をしたコンクリートの遺構が浮かんでいる。湖面から出ている部分だけだと2階建てのように見えるが、ダム湖の水深は少なくとも数十メートルに及ぶ。いま見えている部分は、建物全体のほんの一部にしか過ぎないのだ。

1キロほど進むと発電所跡が見えてきた
ボートを停めてしばし撮影

 湖の真ん中にボートを停めて写真を撮り、いよいよ建物に接近しようとした、その時だった――。突然、ボートのエンジンが停止した。エンストするような動作は何もしていないので驚いたが、こんな時こそ冷静な行動が必要だ。出発前に聞いた説明を思い出し、再始動させる。しかし、エンジンはかからない。

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