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 ひと通り探索を終え、ボートに飛び移る時が、また怖かった。グラグラと揺れるボートに着地し、恐る恐るエンジンを始動する。今度は一発でかかり、無事に帰ることができた。

立入禁止になった今の姿は……

 その翌年、レンタルボート屋さんから冒頭の電話をもらった。発電所跡が立入禁止になったことで、湖の風景はどう変わったのだろうか――。それを確かめるため、1年ぶりに現地に向かった。

 すると、建物の周囲は黄色い規制テープで囲われ、立入禁止の札も取り付けられていた。地震に対する安全管理のため、この措置が講じられたようだ。また、発電所跡近くの地上には、導水路や落筏路(らくばつろ)の遺構も残っているが、こちらも同時に立入禁止になっていた。

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建物は黄色い規制テープで囲われている
立入禁止の札も貼られている

 ちなみに落筏路というのは、筏を流すための水路のこと。上流の山で伐採された材木は、筏に組んで下流へ流して運ばれていたが、摺子発電所の建設に伴って設けられた堰堤によって、川の流れが断たれてしまった。そのため、地下におよそ3キロにもおよぶ落筏路が作られたのだ。筏を流していた地下水路というのも、非常に興味深いものがある。

 現在は建物の中には入れないが、ボートを借りて水上から発電所跡を見学するだけなら可能だ。また、発電所跡や落筏路の近くまで、ダム湖沿いの道を歩いて行くこともできる。ただし、土砂崩れ等で道が通行止めになっていることも多く、訪問にあたっては安全管理に十分注意してほしい。

筏を流していた“落筏路”
 

撮影=鹿取茂雄