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「タレントの採寸を事務所の『担当者』が行うという覚書など今まで見たことも聞いたこともありません。もちろんタレントの衣装の作成の際に、採寸はどうしても必要になるものですが、基本的には本人や親御さんにお願いするものです。親御さんから未成年の子供を預かっている立場として、体に触れること自体がトラブルの元にもなりますから」

「極めて精緻に準備された悪質な覚書」

 前出・仲江弁護士が続ける。

「覚書の第2条において、採寸を『事前予告なく』『急遽』行うこと、『身体等に接触すること』『脱衣を伴う場合』を明示している点が悪質ですね。もし、この担当者がタレントを全裸にし、採寸と称して体を触った場合でも『覚書の通りだ』と訴えることで、自らの強制わいせつの罪を正当化できるようにしようという意図が強く推認されます。第2条第3号の『採寸等実施が第三者の目に触れぬよう、十分に配慮された場所で行うこと』という規定は、女子への配慮を装い、密室での犯行を可能にするための文言である可能性もあり、極めて精緻に計画・準備された悪質な覚書であると思われます。

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写真はイメージ ©️iStock.com

 ただ、仮にこのような覚書を事務所とタレントの間で結んでおり、13歳未満のタレントが『採寸で体を触る』ことや『裸になる』ことを同意していたとしても、もし、そのような行為を『担当者』が行った場合は、暴行・脅迫がなかった場合でも、強制わいせつ罪になります。つまり、覚書にサインをしていたか否かを問わず、加害者の行為が客観的に見て“わいせつ行為”であれば、強制わいせつ罪が成立します。

 しかし、13歳以上のタレントについては、暴行・脅迫を用いなければ強制わいせつ罪が成立しないため、詳しい法律知識のないまま覚書にサインをさせることにより、加害者が暴行・脅迫を用いるまでもなく、わいせつ行為を甘受せざるを得ない状況に追い込まれることが懸念されます。

 また、倫理的にいってもこの覚書は不適切なもので、採寸等についてルールを定めるのであれば、同性の者が行うことや第三者が立ち会うことを規定した方がよいでしょう」