「女性の集団は難しい! 家内ひとりでも大変やのに、女子バレーやって、髪の毛真っ白になりましたから」と、2021年なら炎上しそうなコメントの後に、「バランスが難しいですね。どうしても感情があるから。『メグカナ(栗原恵・大山加奈)』が騒がれたときも、他の選手は面白くない。そうするとガスがたまってくるので、私が代表して大山選手を怒るわけです」と柳本氏は続けた。
柳本氏は「時効」と笑い話にしているが、協会の圧力や選手間のトラブルで代表から外れた選手がいたとすれば、その恨みは何年経っても薄れるものではない。
引退後に現役時代のトラブルを告白するのは監督だけではない。2004年アテネオリンピックの代表メンバーで、2012年のロンドンオリンピックにも出場した大友愛はテレビ番組に出演し、柳本監督時代について「どーしてそんなに『メグカナ』なんだとムカついていた」と話している。
大友はメグカナの3学年上にあたる。スポーツは人気も実力も競争の世界なので嫉妬や確執をゼロにするのは難しいが、年下の選手にとってはかなりの圧力を感じていたことだろう。
一斉に無視、怪我をさせるためにスパイクを…
メグカナ同士の関係も、周囲のギスギスした空気に振り回されていた。
同い年のスター選手で、代表チームでも最年少だった2人はお互いに相談相手になり、励ましあう仲だった。しかし注目度が上がると、記者からの質問も「お互いをどう思うか」というものばかりになっていき、徐々に相手の心境を勘繰ったり「実は向こうは自分のことを嫌いなのではないか」と疑念が生じていったという。
それでもメグカナの2人の間に立場の強弱はなく、しかも2人だったのでまだマシだったのかもしれない。メグカナの後にスターになった木村沙織には、同格の相手が存在しなかったからだ。
「スーパー女子高生」として早くから人気になり、ロンドンオリンピックでは銅メダル獲得。そしてリオオリンピックを目指すチームでは、木村はキャプテン兼エースという完全な“1強”状態だった。週刊文春(2016年9月1日号)では、木村の特別扱いに反発して新鍋理沙が代表チームから離れたことを報じている。
アテネオリンピックに出場した杉山祥子が、過去に代表チーム内で一斉に無視されるいじめの標的になったことがあると発言してバレー界をざわつかせたこともある。練習中に事故に見えるギリギリのラインで嫌いな相手の指が怪我するようにスパイクを打つ、という話は複数の選手から聞いたことがある。一見仲が良さそうな女子バレーチームには、表から見えない複雑な人間関係が存在するのだ。