賭けマージャンで親睦を深める
「松永さんの力はそれは大したもんです。キタ新地に彼が通っていたクラブの女の子が、新たに店を出したときなどは大変でした。松永さんのご機嫌をとるため、各社が内装を手掛けるんです。どの会社が玄関で、フロアーは別の会社、壁はどこそこで、飾りはあそこなんていう感じでした。私は店へ豪華なトイレをプレゼントしました」(石田)
真っ昼間、業務屋たちが思い思いに「談合」のサロンへ姿をあらわす。サロンにはマージャン卓が10台ほど置いてあった。広く豪華な造りだ。業務屋たちはギャンブル好きが多い。賭けマージャンは、彼らの楽しみでもある。もっとも、石田はあまり関心がなかったと話す。
「マージャンすれば、一度に20万円も30万円もやり取りしなければならない。だから私はマージャンが好きではなかったし、一日に30万円も負けたんでは、やってられません。それで私はもっぱら、昼ごろ会社からサロンに顔を出し、そのあとはたいていサウナで暇をつぶしていました」
その後、談合屋たちがさすがに公式な業界団体の建物へ公然と集まるわけにはいかなくなる。そこで、サロンは建設業協会のビルを出た。「建築栄会」は、大阪城の見える大阪証券取引所前のビルに間借りし、「錦城クラブ」と看板を変えた。しばらく大阪城の別称であるその「錦城クラブ」に、談合屋たちが集うようになったという。
ただし、単にブラブラしているばかりではなかった。公共工事は、発注する中央官庁や地方自治体の指名制度により入札、発注となる。普段、遊んでばかりいる業務屋たちは、このときばかりは駆けずりまわった。
「『錦城クラブ』では、大阪に何十社もある業者のなかから委員会社を選び、運営してきました。スーパー5社と浪速5社と呼ばれる関西の老舗企業が常任の委員となり、そこへさらに準大手の何社かが選任されて委員になる。私のときに東急も委員会社になれたのですけど、同じく西松も関西の委員会社でした」
と石田。委員会社はいわば国連安保理の常任理事国みたいなものだという。