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“昼からマージャンで20、30万円を賭け…” 関西建設業界のドンが明かした「談合」の実態

『泥のカネ 裏金王・水谷功と権力者の饗宴』より #11

2021/03/08

source : 文春文庫

genre : ニュース, 社会, 政治, 経済, 読書

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「その委員会社の中で拒否権を持っているのは、スーパーの竹中と大林だけ。なかでも最終的に採決を下すのが、竹中の松永さんと決まっていました。公共工事を受注したいと思えば、委員会社に根回しをし、最後は大林組や竹中の松永さんに了解を得なければならない仕組みになっていたのです」

 むろん石田も「天皇」松永の懐刀であり業界のドンとして、談合メンバーの陳情を受け、ときには工事のお墨付きを与えた。こう言葉を足す。

「大阪市の工事は彼の了解がなければできなかった」

「栄会時代から、『一分ゲーム』というのがありましてね。司会が工事名を読みあげ、各社に落札希望を尋ねる。『どうぞ』といえばパス。その工事は受注しなくていいという意思表示です。そうして、『お願いします』と返事する会社が一社だけなら、それで決まり。すぐに決まるので、『一分ゲーム』と呼ばれていました。そうしてゲームを始め、競合会社が出るときもある。そのときが、私たち委員会社の出番で、裁定に持ち込むのです」

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 談合の裁定において、松永が出張るのはよほどのことであり、たいていは石田の判断でカタがついた。松永の死後、石田の影響力は「大阪市の工事は彼の了解がなければできなかった」(ゼネコン幹部)と言われたほどに大きくなる。

 その談合のドンの一人、東急建設元顧問の石田充治にとって、印象に残っているもう一人の関西の天皇が、平島栄である。『「天の声」を発し続けた小沢一郎事務所… 東北談合に見る“政治とカネ”問題の闇深い歴史』で触れた業界の“天皇”の一人だ。石田が平島像を語る。

「平島のおっさんは、やり手でしたからなぁ。平島さんが下請けとして使っていた企業もぎょうさんあった。なかでも宮本組という下請けがあってね。私らなんかにも、『宮本を使え』と、とにかくうるさい。断ると、本人からずい分怒られました。宮本組の扱いが原因で、私も最後は、平島さんと仲たがいしてしもうたんです」

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