窃盗グループの拠点を捜索した捜査員が見つけたのは、実行犯が狙いを定めた住宅の家族構成や生活実態がつぶさに書き込まれた紙だった。
「夫 50代 出勤時間9:30~」
「妻 50代 出勤9:30~(パート) 基本的に家にいる事が多い」
別の紙には詳細な住宅内部の間取りまで描かれていた。狙われているのは「高所得者」だという。
「一家を丸裸にするような内容で、被害者が見たら震え上がるだろう。今の窃盗グループは昔の泥棒とは根本的に違う。高級住宅を狙って綿密に下調べをし、確実に大金を得られるように動いている」
メモには部屋の配置だけでなく、テレビの位置や扉の形状まで
2月にメモを公開した愛知県警の関係者はそう語る。メモには別居する娘が実家に帰る頻度や勤務先、乗っている車の特徴、ナンバーまで書かれていた。間取り図も詳細で、部屋の配置だけでなくテレビの位置や扉の形状まで網羅している。狙っていたのは金庫だろうか。「2階 ○金」という書き込みまであった。
県警は防犯の呼びかけなどを目的に公開したというが、一般人にこうしたプロの手口を防ぐ手立てがあるとは容易に想像しがたい。犯行は、綿密で大胆だ。
公開された資料の中には、押収メモだけでなく犯行グループを映した防犯カメラの映像もある。午前4時、愛知県内の真っ暗な住宅街にヘッドライトを消した1台の白い車が止まる。出てきた2人の男は1軒の豪邸の塀にとりついて中をうかがうと、1分ほどで立ち去った。そこにもまた、犯罪者たちの周到な準備の様子が見て取れる。
「犯行の下見と思われます。人目に付かないように深夜から早朝にかけて行うことが多いようですが、これとは別に昼間の明るい時間にスマホで撮影する場面を映したものもありました」(別の愛知県警関係者)