文春オンライン

「自分はこんな所で働く人間じゃない」 “モンスター社員”に共通する“哀しい生態”とは

『あなたの隣のモンスター社員』より #1

2021/03/08

source : 文春新書

genre : ビジネス, 社会, 働き方, 読書, 企業

note

男性従業員を次々と誘惑し…

 私の知人が勤める職場に、まさにこのタイプの女性モンスターがいた。そのモンスター社員は30歳前後の独身女性で、地方の短大を出て地元企業で数年働き、上京して都内のWEB制作会社で働いていた。口を開けば、自慢話ばかりで、

「自分の家は名家だ。父親は会社を経営する地元の名士だ」

「学生時代から十分な小遣いをもらっていたので、アルバイトなどした事がない」

ADVERTISEMENT

「実家の庭の池には、1匹数千万円の錦鯉がいる」

「自分の出た短大は、地元では有名なお嬢様短大だ」

 といった話を繰り返し語る。自慢だけなら聞き流せば害も無いが、露出度の高い服で、男性従業員に迫り、次々と誘惑する。それも、同時期に何名もの同僚と関係を持つため、職場内の空気はギクシャクしていった。そのうち、「体調が悪い」「怪我をした」などと、会社を頻繁に休むようになった。知人が心配して尋ねると、

「彼氏と連絡が取れなくて、不安で食事が取れない」

「彼氏に殴られて、顔に痣ができたので、外に出られない」

 などと訴えた。彼女はその知人が同情して心配してくれるだろうと思ったのだろうが、知人は呆れてしまい、

「プライベートに口を出すつもりはないが、社会人として仕事にプライベートを持ち込んだり、職場の何人もの男性と関係を持つのはどうなのか?」

 と注意した。すると、逆上した彼女は、この知人を無視したり、仕事上の連絡をわざとしないなどの嫌がらせをしたりするようになった。当然仕事上も混乱が起こり、クライアントに迷惑をかけてしまうような事態に陥った。

©iStock.com

 このような場合、本来は上司が厳しく注意するべきなのだろうが、なんと上司も彼女と関係を持った事があったらしく、結局何もお咎めがなかった。職場は散々引っかき回され、何人もの退職者を出し、ついに大口のクライアントも失った。

自己評価の低さがメンタルに与える影響

 この女性のように、自分が注目を浴びるために、自慢をしたり、自分がいかに不幸であるかを大げさに語るモンスター社員がいる。自慢話に関しては、自分自身の事ではなく、家柄や両親の職業、友人関係などを自慢する人が多いようだ。おそらく自分自身を認めていないので、自分の中には自慢できるものがないと無意識に思っているのだろう。自己評価が低いため、メンタル的に不安定なのだ。メンタルが不安定なため、一時の安らぎや親密さを求めて、次々と異性と関係を持つ場合もある。また、常に注目を浴びたいという気持ちが、派手な言動や自慢、虚言という形で表れるのだ。

【続きを読む】 “ファイルの順番でケンカ”“手首を切ると同期にメール”… 職場に不協和音を鳴らす“モンスター社員”はなぜ生まれるのか

あなたの隣のモンスター社員 (文春新書)

石川弘子

文藝春秋

2015年2月20日 発売

「自分はこんな所で働く人間じゃない」 “モンスター社員”に共通する“哀しい生態”とは

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春新書をフォロー