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「自分はこんな所で働く人間じゃない」 “モンスター社員”に共通する“哀しい生態”とは

『あなたの隣のモンスター社員』より #1

2021/03/08

source : 文春新書

genre : ビジネス, 社会, 働き方, 読書, 企業

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どうして部下や同僚をいじめるのか?

 特定の部下や同僚を目の敵にして虐めたり、馬鹿にしたりする人が、実は深いコンプレックスを抱えていることがある。派遣会社で派遣社員の管理を行うK田は、営業所長として営業所の管理スタッフ採用なども担当していた。K田は、大学卒業後、職を転々として派遣会社に入社したのだが、自分の学歴についてコンプレックスを抱いていた。

 スタッフの採用面接で、自分の出身大学より偏差値が上の学校を卒業した人に対して、

「いい大学出ているからって、仕事が出来るとは限らない」

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「俺の知人でも○○大学を出ている奴がいるが、そいつは今だに役職がついていない」

 と、面接に全く関係のないことを言って応募者を戸惑わせていた。

 あるとき、本社からK田の部下としてやってきたA木が、有名私立大学を出ていると知ると、A木に対して、何かにつけて嫌みを言うようになっていった。

自分よりいい学歴の部下を徹底的に虐める

「あの大学を出ているのに、こんなことも出来ないのか? せっかくいい学校出ても意味がないな」

「○○大卒って聞いたから、期待していたのに、使えない」

「本社も学歴だけで採用するから、ろくな人材が採用できない」

 などと頻繁に言うので、A木は徐々にメンタル不全になっていった。本社からそのことで注意を受けたK田は、

「○○大卒のお坊ちゃんは、ちょっとした事ですぐに本社に泣きつく。やっぱりいい大学出ている奴は駄目だな」

 と、A木に聞こえるように嫌みを言うのだった。A木はついに出勤できなくなり、異動を願い出て、別の営業所へ移っていった。

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 K田は、その後も自分よりいい学歴の部下が来ると、徹底的に虐め、次々に部下を潰していった。この事態を重く見た本社の人事がK田を降格し、賃金を下げると、K田は案の定、会社に対して噛みつき、労働局の紛争調整委員会にあっせん(*)を申請した。結局、最終的に給与の6カ月分を支払う事で、K田は退職していった。

(*)あっせん……当事者の間に弁護士等の学識経験者である第三者が入り、双方の主張の要点を確かめ、紛争当事者間の調整を行い、話し合いを促進する事により、紛争の円満な解決を図る制度