単なる“問題社員”の域を越え、組織を破壊してしまうような、理解しがたい言動・行動を繰り返す“モンスター社員”たち……。社会保険労務士の石川弘子氏のもとには、そんなモンスター社員に関する相談が年々増加しているという。
ここでは同氏の著書『あなたの隣のモンスター社員』(文春新書)を引用し、モンスター社員が過剰に会社に反抗したいくつかの事例を紹介。実際に遭遇したモンスターたちの実態と素顔に迫る。(全2回の2回目/前編を読む)
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どうしてやたらと反抗するのか?
些細なことにも、会社に反抗し、職場に不協和音を立てる社員がいる。経営者にしてみれば、非常にストレスが溜まることなのだが、軽んじると大変なトラブルになりかねない。反抗的なモンスターの心理は様々だ。現状の変化に対する恐怖が原因となっていることもあれば、反抗する事で自分の存在意義を見出している場合もある。
ある中小企業の経営者から相談を受けた時の事だ。その企業(A社)は、社員食堂を経営する会社で、得意先の企業にある食堂の運営を請け負って行う業態だった。ある大手企業の工場にある社員食堂は、A社が10年以上運営を請け負っており、通常3名のA社パート従業員が勤務していた。3名の従業員は全員50代後半で、女性2名、男性1名だった。
ある日、3名のうちの1名の女性パートが本社の管理部に「○月○日は法事のため有休を取りたい」と申し出てきた。A社は現場の人間が休む場合には本社から応援を出すことになっている。確認したところ本社所属のパートが応援に行けるので、問題ないと判断し、有休を許可した。すると、1週間後、もう1人の女性パートBも同じ日に有休を取りたいと申し出てきた。管理部の担当者は、
「○○さんと同じ日に有休を取るのは駄目です。うちの会社は、同じ職場で同時に有休を取る事を禁止していますから。有休が欲しいなら別の日にしてください」
と断ったが、Bは、
「○○さんの代わりに応援の人が来るから、私が休んでも2人いるので大丈夫だって皆で話し合いました。その日は姪の結婚式なので、別の日にはできません」
と訴えた。しかし、会社としては2名以上が同日に有休を取ると、お客様に迷惑がかかる。何より会社のルールを破る事になるので許可できないとBの申出を突っぱねた。
有給申請を巡るトラブル
Bが、仕事仲間の男性パート従業員Fに「会社が有休を認めてくれなかった」と愚痴をこぼしたところ、Fは烈火のごとく怒って、本社にやってきた。
「あんたたちは現場の事なんか知らないくせに、勝手なルールを作って押し付けているんだ。俺達だって、仕事に責任を持って真面目に働いているじゃないか!どうして親戚の結婚式にすら出してあげないんだ!」
と声を荒げると、
「会社がそういう態度なら、俺にも考えがある!」
と言って、後日文書を本社に送ってきた。