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“ファイルの順番でケンカ”“手首を切ると同期にメール”… 職場に不協和音を鳴らす“モンスター社員”はなぜ生まれるのか

『あなたの隣のモンスター社員』より #2

2021/03/08

source : 文春新書

genre : ビジネス, 社会, 働き方, 読書, 企業

「今から手首を切る」

 ある会社で、メンタル不全で遅刻や欠勤を繰り返している女性社員がいた。彼女は、母親と2人で暮らしていたのだが、母親もメンタル不全で長い間働いていなかった。彼女は、自分の体調の事や、母親への思い、職場への不満などを人事部に在籍する同期の社員にメールや電話で打ち明けていた。最初の頃は、同期も彼女をかわいそうに思い、色々と相談に乗り、深夜の長電話や、延々と続くメールにも付き合っていた。しかし、さすがに毎日のようにそんな話を聞かされて、段々うっとうしく感じるようになり、電話に出なかったり、メールも返信をしなかったりするようになっていった。同期の態度が変わったことで、彼女は同期を激しく責めた。それでも、同期が、さらに距離を置くようになると、今度は、

「今から手首を切る」

「私はもう生きていくのがしんどい。どうしたらいい?」

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「○○ちゃん(同期の社員)が私を見捨てたから、こうなった。死んだら悲しんでくれる?」

 などと、自殺をほのめかすようなメールが来るようになった。

©iStock.com

 結局彼女は休職し、メンタル不全のため復職できず退職となった。彼女のように、自分自身と向き合えず、他人にどっぷり依存する人は、依存対象が離れようとすると恨みに変わり、とんでもない行動をとることがあるので、要注意だ。特に親切で面倒見のいい同僚などは、依存対象にされやすい。また、このタイプの中には、職場内でグループを作り、過度に親密な付き合いを求めてくる人も多い。自立の出来ていない人は自分の言動に責任を持つことが出来ず、全て人や環境のせいにするという傾向が強いのである。

【前編を読む】「自分はこんな所で働く人間じゃない」 “モンスター社員”に共通する“哀しい生態”とは

あなたの隣のモンスター社員 (文春新書)

石川弘子

文藝春秋

2015年2月20日 発売

“ファイルの順番でケンカ”“手首を切ると同期にメール”… 職場に不協和音を鳴らす“モンスター社員”はなぜ生まれるのか

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