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“ファイルの順番でケンカ”“手首を切ると同期にメール”… 職場に不協和音を鳴らす“モンスター社員”はなぜ生まれるのか

『あなたの隣のモンスター社員』より #2

2021/03/08

source : 文春新書

genre : ビジネス, 社会, 働き方, 読書, 企業

note

 後から聞いた話だが、Fは、以前は大手企業で総務の仕事をしていた。どういう事情があったか知らないが、リストラされたそうだ。すでに50代だったFは、再就職先がなかなか決まらず、パートでもいいから、ということで入社してきたのだ。正社員ではなく、仕事のやりがいも見つけられなかったFは、会社に反抗することで一部の人間から尊敬されることに生きがいを見つけたのだろう。自信を失い、仕事へのやりがいも失った人が、会社に反抗する事で、新たな存在意義を見つけ、モンスター化していくことがある。

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どうして些細なことで感情を爆発させるのか?

 人間には様々な感情がある。生まれたばかりの赤ちゃんは、泣くことで感情をストレートに表現する。成長するにつれ、様々な感情を体験し、表現も多様になる。しかし、大人になっていく段階で、感情をそのままぶつけると、人間関係が上手くいかなくなることを学ぶ。社会に出れば、気に入らないことや、腹の立つこともたくさんあるが、大抵の事は大人としてある程度我慢をしたり、感情に任せて怒りを爆発させることもしないようになっていく。

 ところが、大人になっても感情のコントロールができず、公共の場や職場などで怒りを爆発させている人を見かけることがある。

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 知り合いの経営者から、このタイプの社員の相談を受けたことがある。従業員数名の小さな不動産会社だが、社長以外全員女性で、アパートの管理や駐車場の管理などを行っている。そこで働く2名の中年女性の折り合いが悪く、喧嘩ばかりしていて困るというのだ。その喧嘩も、社長にとってみればくだらないことが原因で、

「ファイルをこういう順番にしてくれと言ったのに、何回言っても直さない」

「流しに湯呑をためていて、いつまでたっても洗わない」

 といった内容だ。女性同士でそういった諍いは、よくあることだし、放っておいても害はないのでは?とアドバイスすると、

「まぁちょっとした口げんか程度なら、私も放っておくんだが、とにかくすごいんだ。お客さんの前でもお構いなしに始めるんだから」

 と、社長は、本当に困った様子だった。