運を育て、運命を変える
「運が強い」とか「運が弱い」という表現をよくするが、じつは運の芽ともいうべきものは、誰もが平等にもっているのではないか。それでは、なにが運の強さと弱さを分けるのかといえば、いま述べたような作業、努力をどれだけしたかだ。運の強さとは、誰もがもっている運の芽を育てるために、どれだけ努力を重ねたかで大きく変わってくるのだ。
そして、そうやって獲得された運の強さによって、運命もまた、変わってくる。運と運命は同じようで違う。もっている運は同じであっても、育て方で運命は違ってくる。逆にいえば、運命は運の育て方で変えられるのである。
生まれた環境によって運命は大きく左右される──そういう反論もあるだろう。「努力だけでは運命は変えられない」と。
しかし、私の家も決して恵まれていたわけではなかった。それどころか、赤貧洗うが如しといっても過言ではなかった。私はなんとかしてそこから抜け出そうと、少しは才能がありそうな野球を選び、人より努力を重ねた。
もちろん、運が味方してくれたことも多々あった。だがそれは、「誰かが見てくれている」と信じ、どんなときでも努力を怠らなかったからだと私は確信している。日々の努力が私の運を育て、運命を変えたのだ。運命を変えるのは、決して不可能なことではないのである。
闘争心なき者に成長なし
楽天の監督として2年目のシーズン。高校を出たばかりの18歳のルーキー田中将大を、私はいきなり先発でデビューさせた。しかも敵地に乗り込んでの福岡ソフトバンクホークス戦だ。
田中は打ち込まれた。2回57球で6失点のKO。しかも、デビューから3試合連続でKOされることになるのだ。
ある程度予想されたことだから、かまわなかった。見たかったのは、彼がどんな顔をしてマウンドから降りるかだ。