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トヨタが自社で手掛ける街づくり 「Woven City」はなぜ日本のデベロッパーに声をかけなかったのか

2021/03/09
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価格、人口、アクセスもネックに

 だいたい、一体いくらで売れるのだろう。東富士工場がある裾野市御宿近辺の公示地価は1㎡あたり7万4200円、坪換算で24万5000円だ。土地代は安いので50坪で1225万円。戸建ての家を建てて経費込で3000万円。土地とあわせて4225万円。周辺の中古戸建て住宅の相場が1000万円台後半から2000万円台前半。これ以上価格に開きがあると売れないかもしれない。微妙なラインだし、70万㎡などという天文学的に広い土地、普通のデベロッパーでは到底腰が引けて、商談にすら現れないだろう。

 もう一つ気になる点がある。街の計画人口だ。巨大な敷地に、たったの2000人だ。2000人では住宅は800戸から1000戸で十分だ。これなら戸建て住宅ではなくタワマン一丁でやるのがよさそうだ。タワマンといっただけで地方でも高値で売れることは既に全国各地で実証済みだ。ただ2000人では大型の商業施設はまず来てくれそうにない。

 最寄り駅が岩波駅というのも不安だ。岩波駅から新幹線の通る三島駅までは御殿場線沼津経由、東海道線で30分強だ。三島から東京までひかりで42分、こだまだと53分。通勤には1時間40分以上を覚悟しなければならない。ちょっと厳しそうだ。

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©️iStock.com

あまりに違う「街」に対する概念

 晴海フラッグでは4000戸も売らなければならず、いくら土地代が安いとはいえ、五輪の行方もあいまって青息吐息状態なのに、申し訳ないが裾野でタワマン、戸建て住宅は正直ドン引きだ。

 デベロッパーが事業において考える頭の構造はおおむねこのようなものだ。まずは確実に見込まれる収益があったうえでないと、「未来」を語るおもちゃで遊ぶことはできないのが彼らなのである。最近、デベロッパーもタウンマネジメントやエリアマネジメントなどを謳い始めてはいるが、「付け足し」感が半端なく、地元で一般社団法人などを設立してそこに挨拶料程度のお金をばらまいてお茶を濁しているのが実態だ。