おそらくこのあたりの事情について、豊田社長は良くご存じだったに違いない。そもそも「街」に対する概念があまりに違いすぎるのだ。そして、これからの日本の未来を語ることができるのはデベロッパーが建てるタワマンではなく、このWoven City なのかもしれない。計画人口たった2000人の街に対して、計画発表後すでに3000件以上の個人法人の問い合わせが来ているという。これはデベロッパーではなかなかできない芸当だ。
大手企業が示した「働き方」「生きざま」の変化
人材派遣業のパソナは本社機能の一部を兵庫県淡路島に移すことで大いに話題となった。事務系を中心に1200人の社員が、淡路市に住むことになる。淡路島は気候も穏やかで、関西の湘南とも呼ばれるエリア。神戸や大阪へのアクセスも確保しながら、物価が安く子育てがしやすい環境で、社員がいきいき働く。そこで生まれる新しい生き方の価値観を会社が社員に対して提案したといえる。
大手監査法人のEY(新日本有限責任監査法人系)も新しい移住・定住プログラムを開発。すでに社員の一部が地方で定住しながら働く働き方の実践をスタートさせている。
渋谷のインフォスタワーに入居していた大手芸能事務所アミューズも河口湖畔への移転が噂される中、どうやらこれまでの街=都会、都会=東京、東京のキラキラビルで働いて、激高の住宅コストを払って満員の電車に乗って通勤するという「生きざま」に変化の波が押し寄せていると言えそうだ。
街で活動する人たちがfounderとして住み、新しい未来を共に育んでいく。そこに生まれるコミュニティがまた新たな日本社会を形成していく。こうして考えてみると令和に働く人たちには、どうやら明るい未来が待っていそうだ。そして、そんな街を創造していくのは、これからはデベロッパーというよりも、トヨタ自動車やパソナといった、不動産とは縁の薄い企業の手によるものとなりそうだ。