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「紀州のお殿様の時代にお忍びで遊びに来る場所だった」和歌山の“限界”色街で出会ったお姉さんの告白

日本色街彷徨 和歌山・天王新地#2

2021/03/13
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「去年の9月ぐらいから、私ひとりでやっている時があった」

「和歌山市内はここだけ細々とやっているんです」

「僕は嬉しかったんですよ。まだここが残っていて、大阪とかに緊急事態宣言が出ていて、もう潰れたんじゃないかと思ったんですよ」

「実はね。和歌山も緊急事態宣言が出たんで、去年の5月は閉めたんですよ。去年の9月ぐらいから、私ひとりでやっている時があって、それからコロナが増えてきた10月からは厳しいね」

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©八木澤高明

「お客さんは普通はどれくらい来るんですか?」

「お客さん? それは内緒。恥を掻きたくないもん。ところで、やらんでええの? 時間終わっちゃうよ」

「いいんですよ。ちょっと話を聞かせてくださいよ」

「えーっ、やらんでええの。寂しいわ。今日はまだ処女やで私。それで察してな。今日は初めてのお客さんやけど、よく来てくれるお客さんもいるのよ。1日貸し切ってくれて、美味しいもん食べに連れていったりしてくれるんですよ。お客さんには恵まれている方だと思います」

「ここは何時から開けてるんですか?」

「こういう街は猫を大事にするんよ」

「朝8時には私は来て、掃除したり、洗濯したり、買い物したりで、10時には座ってお客さん待ってるよ。雑用係みたいなもんなんですよ。猫もおるからね。こういう街は猫を大事にするんよ。招き猫だからお客さんを呼んでくれるのよ。猫の置物を沢山置いたりしてるんですよ。犬は、いないを意味する“いぬ”だから縁起悪いんですよ。私は犬も好きなんだけどね。それと最近の子はあんまり行かんけど、下の神様で淡島神社というのがあるんです。そこに年に一度はお参りに行きます。おかげさんで、下の病気はないけど、糖尿病がつらいんよ。いつまで生きられるかね」

「何を言ってるんですか。元気そうじゃないですか?」

「いやいや、元気そうに見えるけどね。つらいんですよ。毎日インシュリン打って頑張っているんですよ」〈#3に続く〉

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。

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