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「わざとらしい」と不評な「説明役」も難なくこなす

 上白石姉妹はともに東宝芸能に所属し、ミュージカル『赤毛のアン』のアン・シャーリー役を姉妹で連続して主演するなど、しっかりとした素地が必要な舞台を中心に活動していくのだが、筆者が強く印象に残っているのは映画『ちはやふる』で上白石萌音が演じた大江奏役である。

「奏ちゃん」は日本の伝統と古典文学を愛する少女として、スポーツである競技百人一首の和歌の背景にある歴史的意味を解説する、作品にとって重要なパートを担う役として配置されていた。

上白石萌音さん ©文藝春秋

 映画やドラマの中にはこうした、観客に設定やルールを飲み込ませるための「説明役」がしばしば存在する。だが、この「物語の中で説明する」というのは実はけっこう難度の高い演技なのである。説明セリフというのは観客にわかりやすくはっきりと発声しなくてはならない反面、それは「不自然である、わざとらしい」と言われる危険と背中合わせだからだ。

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 だが、上白石萌音は見事にその難しい演技をこなし、彼女の演じる大江奏は『ちはやふる』三部作を通じて物語のよき導き手となっていた。

萌音のブレイクの秘訣は「受けの芝居」

 上白石萌音の演技の上手さは「受けの芝居」、リアクションにもよく現れる。彼女が演じる大江奏は、主演の広瀬すず演じる綾瀬千早、それに立ちはだかる天才的ライバルたちに驚き翻弄される役どころなのだが、試合のメインになる天才たちの戦いは、上白石萌音が演じる大江奏が驚きつつそれを説明する、いわばプロレスラーのように相手の技を受ける「受身」の演技によって引き立つ。上白石萌音はこの「受身」をとる芝居が本当に上手いのである。

©共同通信社

 彼女の「受けの芝居」がブレイクするきっかけとなったのはなんと言っても昨年屈指のラブコメヒット作となったドラマ『恋はつづくよどこまでも』だろう。放送前、このドラマがここまでのヒット作になると予想した者は少なかった。

 トップスターの佐藤健に対して、相手役の上白石萌音はまだその時点では視聴率が期待されるような人気女優とはみなされておらず、男女とも互角の人気スターが演じる通常のドラマにくらべてつり合わない、弱いのではないかという見方もあった。だが結果的には、この不均衡さがドラマにエネルギーを生み出す。