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 彼女は外国をよく知っているから、私は質問ばかりします。「どうして日本は自立できないの?」「外国に頼らないと食べていけないのよ」最後は政治の話や世界の問題を語って、「あら、もう2時間しゃべっちゃったね」。けれども一昨年、彼女は亡くなってしまいました。

 だからいま、言いたいことを言える友達がいなくて寂しいの。週刊文春の編集部から連絡があったとき、「えッ、私、何か悪いことしたかしら?」と身構えましたよ。よくお聞きしたら連載だというのですが、どういう態度で何をお話しすればいいのか。兼高かおるさんと夜中の電話で話してたようなことを、言いたいように言っちゃえばいいのかなと考えて、お引き受けしました。

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 この年になって私、自分を規制するタガが外れました。いい顔をしたいとか、カッコよく見せなきゃとか、「世間のことを何も勉強してないな」と言われたら恥ずかしいとか、そういうタガが外れたの。もう、誰に何と思われてもかまいません。偉そうなことは言えないけれど、八十七歳には八十七歳の言い分や言い方ってものがあります。ボケてますがそれを書いてみます。

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 もともと私は、後ろを振り向くのが嫌いです。首が痛くなりますから。でも最近は、語り部としてインタビューを頼まれる機会も増えました。去年で芸能生活七十周年を迎えましたから、ご縁のあった映画監督や役者さんの思い出や、身の回りのことなども、お話ししていきたいと思います。

 飾らないこと。それがいまの私にとって、きれいに生きること。女優人生も私の人生も、あともう少しで終わりだろうから、歯に衣着せないで、言うだけのことを言って消えて行こうと思っています。世間知らずの私ですがどうか笑ってお付き合いください。

(構成 石井謙一郎)