ーーアジアでは、チロルチョコというブランドに対しての需要があるんですか?
松尾 需要や認知度は国ごとに違います。中国ではかなり前から並行輸入されていて、「チロルチョコ」ではなくて「松尾チョコレート」と呼ばれているんですよ。というのも、箱やパッケージに書いてある“製造所 松尾製菓株式会社”の松尾を取って「松尾チョコレート」になっちゃったらしいんです。
Weibo(ウェイボー)で「松尾チョコレート」と検索をかけるとものすごくヒットするけど、「チロルチョコ」だとチョボチョボとしか上がってこない。それもあって「松尾チョコレート」で公式のアカウントを開設していますが、個人的にはモヤモヤしましたね。2004年に松尾製菓からチロルチョコ株式会社として独立して頑張ってやってきたこともあるし。
「いいのか、それで」と会社の皆と話し合いましたけど、「これだけ松尾チョコレートで認知されているのに、わざわざそれを捨てるのはどうか?」ということになって、中国だけはそっちの名前で認知してもらおうと割り切りました。
中国で食される、さっぱりとした味を再現した〈スイカ〉
ーー中国だと、どういうフレーバーが好まれますか?
松尾 あちらで年間を通して売れているのは〈スイカ〉。もう、ここ2年くらい安定して売れています。日本だとスイカって夏の風物詩ですけど、中国ではディナーの締めとしてフルーツが出てきて、その代表的なものがスイカなんですよ。
中国に商談に行ってディナーを食べるとスイカが出てくるので「年がら年中食べるの?」と現地の方に訊いたら、「いつも食べてるよ」って。そういえば食前にもスイカジュースが出ているなと思って、じゃあ〈スイカ〉をやってみようとなったんです。
ーー日本でも〈スイカ〉は出していますよね。
松尾 何度かありますけど、7月か8月にちょろっと出す程度で。日本で出した〈スイカ〉を北京と上海それぞれで100人くらいの方に食べてもらってアンケートを実施したんです。そうしたら、中にソースなどが入っていたのがダメだったのか甘すぎて食べられないと言われてしまった。
それで甘さを控えた、さっぱりとしたスイカを再現したものを試作して、もう一度北京と上海でアンケートをしたら大好評でした。
日本ではスイカに甘さを求めますが、中国ではどちらかというとさっぱりした味を求めるのかなと思います。実際、現地のスイカは甘さ控え目でした。
かといって、上海と北京で味覚が共通しているわけでもない。一方はコーヒーをすごく飲むけど、もう一方はあまり飲まないとか。距離も離れているからだと思いますが、例えるならば北海道と沖縄みたいな感覚ですかね。