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「お母さんと思えない。他人感覚しかない」 覚せい剤で逮捕された17歳の少女は、なぜ児童養護施設に“いられなくなった”のか

『女子少年院の少女たち』より#1

2021/03/29

 中学を卒業してわずか半年後に暴走族・レディースの総長となり、自身も少年院に入院した中村すえこさん。中村さんは、退院した後に少年院への支援活動を始め、2019年には、女子少年院へ入った少女たちが、犯罪に手を染めざるを得なくなった背景を描いたドキュメンタリー教育映画『記憶 少年院の少女たちの未来への軌跡』を製作した。

 その映画を元に執筆した著書『女子少年院の少女たち ―「普通」に生きることがわからなかった』(さくら舎)より、一部を引用して紹介する。(全2回の1回め/後編を読む)

中村すえこさん

◆◆◆

群馬県の榛名女子学園へ

 2018年2月27日、私たち取材陣は群馬県の榛名女子学園に到着した。この日は、映画 『記憶』のクランクインの日であり、やっとたどりついたスタートだった。

 入り口にある門は開放されていて、私たちが車で入っていくと、担当の方が玄関で出迎えてくれた。

 建物の外観は女子少年院というより保養所のような雰囲気だ。玄関を入ると左には受付、目の前の階段を上がると園長室や応接室があり、玄関から右側の奥にある重い扉の向こう側が少女たちがいる場所となっている。ここから先はドアごとに施錠してあり、職員は腰にぶら下げている鍵で、そのつど解錠と施錠をすることになっている。

 園長先生に挨拶をし、担当者に案内された部屋は、少年院の中とは思えない家庭的な部屋だった。鉄格子や鍵はなく、6畳ほどの畳の部屋にテーブルとテレビ、小さなキッチンにはポットと湯呑みが置いてある。

「そうか、ここは出院準備室か」

 遠い過去の記憶がよみがえる。

 少年院に入ることを入院、出ることを出院という(満期あるいは満齢による本退院を迎える前に、ほとんどが仮退院となる)。出院準備室とは、出院を数日後にひかえた少年が当日まで過ごす部屋であり、決められた範囲内であれば、自由に移動することもできる。期間にすると3日~1週間以内で、そのあいだに自分が使用した少年院の備品である衣類や生活用品を洗濯や補修したりして、文字どおり出院の準備をする部屋だ。

暴走族時代の中村さん

17歳のとき覚醒剤で逮捕された佳奈

 しばらくすると、法務教官が少女を連れてやってきた。

 少女は佳奈(仮名)といい、現在18歳。17歳のときに覚醒剤で逮捕され、1年前にこの榛名女子学園に収容された。

 肩まで伸びた髪を赤いゴムでおさげに結び、金髪だった髪の毛がちょうど1年分黒くなっている。少しぽっちゃりしているように見えるのは、少年院での食事が充実していたからだろう。表情がかたいのは緊張しているせいかもしれない。