全国に9か所ある女子少年院。犯罪に手を染めてそこへ入ることになってしまった少女たちは、“普通”が何かわからないという。
「自分も同じ思いだった」と語る中村すえこさんは、自身も少年院に入院したという経験を活かし、ノンフィクション『女子少年院の少女たち ―「普通」に生きることがわからなかった』(さくら舎)を上梓した。
中村さんが著書出版に至るまでの経緯を教えていただいた前編に続き、後半では取材を重ねた女子少年院の少女たちの実態について詳しく伺った。(全2回の2回目。前編を読む)
性的虐待を受けても「お母さんが幸せそうだったから言えなかった」
――少女たちを取材していて印象的だったエピソードをお聞かせください。
中村 「幸せになるのが怖い」、「幸せを感じたことがない」、「少年院に入った自分が幸せになっていいのか」、そんな言葉を何度も彼女たちの口から聞きました。そんな思いを抱えるに至るまで、今まで一体どんな生活を送ってきたんだろうか。それは女子少年院を回り始めたときから、そして取材をしていくなかでもずっと感じていて。
他にも、初めてご飯を1日3食食べることを知ったとか、初めて信頼できる大人に出会ったのが少年院だったっていう子もいましたね。
東北の女子少年院に、お父さんを刺したという女の子がいました。刺した理由は、お父さんから性的虐待を受けていたから。なんでお母さんに相談しなかったのって聞いたら、「お母さんが幸せそうだったから言えなかった」って。自分も幸せになっていいはずなのに、この子はずっとお母さんに遠慮して我慢していたようです。
こういった子が少年院に送致される理由というのは、親を刺した罪だけが理由ではなくて、子供を置いておけない環境の家から引き離すという意味もあります。
「孤独」という言葉では片づけられない犯罪に手を染める少女
――そんな、やむなく罪を犯してしまう少女たちに、共通点はあるのでしょうか。
中村 女子でも男子でも、「居場所がない」とか「孤独だ」とか「どうせ私なんか」って感じる気持ちは一緒なんだなって思いました。かつて私が抱いていた気持ちを今の子たちも感じている。そういった意味では、犯した犯罪はそれぞれ違っていても、根底にある問題は同じ。
ただ、手を差し伸べてくれる人や理解してくれる人が、私の10代のときよりも減っていて、無関心な人が増えているのかなということも感じています。当時金髪になった私を見ても、近所のおじさんやおばさんは声をかけてくれましたから。今は昔と比べたら孤独になりやすい環境かもしれません。この言葉だけで片付けたくはないのですが……。