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「お母さんと思えない。他人感覚しかない」 覚せい剤で逮捕された17歳の少女は、なぜ児童養護施設に“いられなくなった”のか

「お母さんと思えない。他人感覚しかない」 覚せい剤で逮捕された17歳の少女は、なぜ児童養護施設に“いられなくなった”のか

『女子少年院の少女たち』より#1

2021/03/29
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 佳奈はあと数日で仮退院となるが、帰る家がない彼女は「職親プロジェクト」の企業が帰住先(出院後に帰る先)になっていた。仮退院し社会に戻っても、原則として 20歳になるまでは保護観察がつく。その期間は人それぞれで異なるが、保護観察期間中は、保護観察所の保護観察官や民間ボランティアの保護司が定期的に面接・指導して立ち直りをはかる。

 仮退院後は親元に帰るのが基本だか、引き受ける親がいない場合は更生保護施設に行くか、理解ある企業が引き受けてくれるかになる。

 佳奈には帰る家がないのだろうか。聞きたいことはたくさんあるが、まずは佳奈がどうしてここへ来ることになったか、そこからはじめた。

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上司が様子がおかしいことに気づいて警察へ

「ここへは何をしてきたの?   話せる?」

「はい。覚醒剤を使って逮捕されました」

「『おはよう逮捕』で捕まったの?」

「おはよう逮捕」というのは、早朝に警察が令状を持って自宅にやってくる逮捕で、私もこれで捕まった経験がある。

 もちろん辞書に載っている言葉ではない。いわゆる業界用語で、その世界の人しか伝わらない言葉だ。私はそっち側の人間だよと、わかってもらうためにわざと使った。

 佳奈の顔が和み、ゆっくりしゃべりはじめた。

「違います。静岡県で働いていて、住み込みで美容院で働いていたんですけど、上司が様子がおかしいことに気づいて、それで上司と一緒に警察に行きました」

(※写真はイメージ) ©️iStock.com

「えーっと、ちょっと待って。住み込みで働いていたってことは、何歳から働いていたの?」

「捕まったのは17歳ですけど、高校受験に失敗して、働かなくちゃいけなくなって。施設を出ていかなくちゃいけないから」

「施設って児童養護施設?」

「はい」