「私、ひとつのことに集中するとまわりが見えなくなっちゃうので、整形が何かを変えてくれると思ったら、あとは何も考えられなかった」
「何か、って?」
「整形した先に何かを得られると思ってたんですよ。何かはわからないけど。だから早く整形したいと思ってた」
「その何かは得られたの?」
「何かって漠然としているけど、求めるものが手に入るかもしれないって思ったけど……」
整形したら何かが変わる、と思っていた美和。しかし、その「何か」を変えることはでき なかった。男の人がやさしくなったとか、違う扱いをされるようになったとか、目に見える変化はあった。でもそれは自分が求めていた変化ではなかった。
何を変えたいか、自分自身もわからない。
何を変えたいかわからないが、自分の容姿を変えることができたら、何かが変わる。
容姿が変われば、求めているものが手に入ると思っていた。
美和は、そのときのことを、「目の前の自分の世界を変えたくて、必死にもがいてたのかなって」といった。
内面の気持ちの持ち方が変えてくれるんだなって思うようになった
美和の目の前にはどんな世界があったのだろう。
「ひとつ、質問していい?」
美和がうなずく。
「過去の自分がいるじゃん。その過去の自分は、何が変わるって思ってたんだと思う?」
くり返しの質問になっていることはわかっていた。だが、私は過去の自分を客観的に見ることは、問いからはじまると思っている。
もう少し、もう少し、そのときの自分と向き合うことができれば、気づきがあるかもしれない。それこそ漠然とした理由だが、彼女たちと向き合うために私にあるのは経験だけ。
「なにか、世界を変えたい、自分の見える世界を変えたいと思っていたけど、それは整形で変えられなかった。もっと内面の気持ちの持ち方であったりとかのほうが変えてくれるんだなって、いまは思うようになった」
変えたい何か、についてはまだ自分でもわからないけど、大事な部分はいろいろ考え、見えはじめているようだ。答えよりも、こうやって振り返り、自分を見つめ直すことは大事なこと。いまはそう思える、という美和の変化に少し安心した。
(文=二階堂銀河/A4studio)