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「これは、指の一部です」「肉が縮まり、骨がよく見えました」裁判員制度開始直前に生まれた異様すぎる裁判

『私が見た21の死刑判決』より#37

2021/04/10

source : 文春新書

genre : ニュース, 社会, 読書

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モニターに映るバラバラになった遺体

 大画面いっぱいに、人差し指もしくは中指が、付け根から切断された写真が浮かぶ。腐りかけて、全体が少し黒ずみかけている。これが人間の指であることを証明するつもりだったのだろう。検察官が続けてあっさり言う。

「曲げてみました」

 大画面は同じ指が関節から折り曲がったものに変わる。画面から顔を背ける傍聴人がいる。しかし、そんなことは意に介さず、検察官は、下水道から回収できた成人女性のバラバラになった遺体のひとつひとつを、スライド形式で上映する。骨の破片が49個、肉片が172枚。昼食の休廷を挟んだ直後だっただけに、気分を害してトイレに駆け込む傍聴人もいた。最後には上映したバラバラ写真の全てを画面上にマルチで並べると、検察官は声を張り上げた。

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©iStock.com

「以上が証拠物、遺族のもとへ返すことのできた、被害者に関する全てのものであります!」

 東京・江東区マンション女性バラバラ殺人事件──。08年4月18日午後7時半頃、江東区にあるマンションの9階の部屋に姉と暮らす女性(当時23歳)が、勤め先から帰宅した直後に忽然と姿を消す。遅れて帰宅した姉が異変に気付き、110番通報したことから捜索が開始された。

 ところが、マンション内に設置された防犯カメラには、帰宅する彼女の姿はあるものの、外出したり、連れ去られた形跡は一切映し出されてはいなかった。実は、この時、女性は2軒隣に住む星島貴徳の部屋に拉致されていたのだった。