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「これは、指の一部です」「肉が縮まり、骨がよく見えました」裁判員制度開始直前に生まれた異様すぎる裁判

『私が見た21の死刑判決』より#37

2021/04/10

source : 文春新書

genre : ニュース, 社会, 読書

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「肉が縮まり、骨がよく見えました」

 やがて、玄関ドアをノックされたことから、警察の捜索に気付いた星島は、被害者を強姦することなく、殺害を決意する。そして、手足を縛られ、目隠しをされ、仰向けに寝かされていた女性の首に、左手に持った包丁を突き刺す。

©iStock.com

「硬い筋のようなものが、左手に伝わってきました。ブチブチと、首の筋、首の筋肉、血管が切り裂かれる感じがしました」

 やがて包丁を抜き、失血死させた女性の遺体を浴室に運ぶと、衣服を切り取る。その時の、全裸になった被害者の様子を被告人本人がイラストで描いたものが画面に出る。猥褻漫画の同人誌に寄稿する趣味を持っていたこともあって、星島の絵が微妙にうまい。

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 それから、浴室で頭部の切断に入る。包丁で首を一周するように切り込みを入れていく。すると、切り裂かれた筋肉が収縮して、首の骨が露になる。これを鋸で切っていく。と、この証言をしながら、画面にはマネキン人形の首に包丁を突き立て、首を切断していく被告人の再現映像が大写しになる。

 次にどこを切りましたか、という問いに「右脚」と答える被告人。

「小さな包丁で脚を一周するように切り込みを入れ、鋸を当てました」

 ──切ったところの肉はどうなりましたか。

「肉が縮まり、骨がよく見えました」

 ──肉は、どんな色でしたか。

「赤だったと思います」

 映像には、切り取ったマネキンの右脚。断面が言葉の通りに赤くなっている。

私が見た21の死刑判決 (文春新書)

青沼 陽一郎

文藝春秋

2009年7月20日 発売

「これは、指の一部です」「肉が縮まり、骨がよく見えました」裁判員制度開始直前に生まれた異様すぎる裁判

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