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「目で見てわかりやすい審理」と異様な法廷

 警察の建物内の捜索に気付いた星島は、この直後に女性を殺害。遺体を小さく切り刻み自宅のトイレから流して捨てている。

 東京地検はこの裁判を、あえて裁判員制度を見据えた「目で見てわかりやすい審理」と位置付け、これまでにない立証を行ったのだ。これが異様な法廷を演出することになった。

©iStock.com

 前述のバラバラ遺体を大画面に映し出して証拠を公にしたのに続き、検察は星島への被告人質問をはじめた。

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 起訴事実を認め、争う姿勢の全くない星島は、覇気のない、いまにも消え入りそうな声で、ぼそぼそと質問に答えていく。

 検察官の最初の尋問によると、星島は2軒隣に住む女性の素性も、名前すら知らなかった、と言った。そして、それまで女性との交際経験のなかった星島は、女性を強姦して性の快楽に溺れさせる「セックス調教」によって、自分のいうことなら何でもいうことを聞く「性奴隷」にすることができると考え、ひとりで帰宅した被害者が玄関に入り、鍵をかける直前に室内に押し入ると、大声で叫び、抵抗する彼女を殴打し、手首を縛り、目隠しをして、室内にあった包丁で脅しながら自室に連れ去っていく。

 この証言に合わせて、法廷の大画面には、暴行の一部始終を、モデルを相手に現場で再現している星島の姿が映し出される。被告人の言葉とともに視覚的な効果によって、より現状が鮮明になっていく。これをして、検察官は「わかりやすい」と言いたかったのだろう。ところが、だった──。