健康で文化的な生活を送るために、なくてはならない最大のものが住宅である。十人十色という言葉があるが、住まいに対する考えは人それぞれだし、環境はそれ以上にまちまちだ。だから年号が令和に変わってからも、新しい「ナゾの間取り」が続々登場し、間取りマニアの目を楽しませている。

 珍物件ができる経緯はいろいろだが、図面として目立つのは「足し算」の間取りである。普通の家にはないはずのものが堂々とあれば、「なんじゃそら」と気になるのが人情。そこで今回は「足し算」型の物件を中心に、新しい「ナゾの間取り」を4つ紹介したい。

書斎(バス)は約15畳! バスマニア垂涎の「バス付き賃貸」

 

 総務省統計局によると、日本の住宅における浴室保有率は約96%だという。要するに「バス付き」物件は当たり前で、今日では“風呂なし”に絞って探すほうが難しい。都市部の物件には、洗面台やトイレと一緒になったいわゆる「3点ユニットバス」が多いが、それも合理的な様式として定着している。

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 対して、めったにお目にかかれない「バス付き」の賃貸物件がこちら。バスはバスでも、「湯おけ(bath)」ではなくて、「乗合バス(bus)」のほうだ。

 平屋建ての母屋に横付けする形で、バスの車体が堂々と鎮座している。郊外や地方では、民家の玄関のすぐ横にバス停がある光景も目にするが、この物件ではバスの巨体が常にそこにあるのだから、存在感は圧倒的だ。

 ちなみにこの車体は、東京都多摩地区を走る「立川バス」の中古品であると思われる。物件の所在地は八丈島なので、運び入れるのには苦労があったことだろう。

 物件の案内写真では、行き先表示のLEDも点灯しており、状態が良いことがわかる。「書斎」とされているが、バスとしての内装がそのままなので、快適に使うには工夫が要るはずだ。

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 ニュース番組でも特集されていたが、近頃はテレワークの場所とするためにワゴンやキャンピングカーを買い求める人が多いという。スケールこそ違うものの、「クルマを書斎にする」という発想においてはこの物件も一緒である。

 また、廃バスを小屋や倉庫として活用するというのも、実は珍しいことではない。佐世保市の山間部には、廃バスの車体を改造し公民館として利用している集落もある。特に戦後の昭和期には、廃車体の利用が盛んに行われていた。

 しかしやはり、賃貸物件として入居者が募集されるとなると、「バス付き」を強調した間取り図には大きなインパクトがある。もちろん入浴には適さないが、乗り物好きの男子にとっては、夢のあふれる空間である。