文春オンライン
中古バスで作った書斎、築60年洞窟付きのアトリエ…“足し算の発想”で生まれた「ナゾの間取り」

中古バスで作った書斎、築60年洞窟付きのアトリエ…“足し算の発想”で生まれた「ナゾの間取り」

究極の“箱庭的”リゾート地が出現

 

 最近は少なくなったけれど、一昔前のテレビには「セレブのお宅拝見」をする番組が多かった。その番組に出てくるような豪華な間取りの中古物件がいま、住宅情報サイトに掲載されている。

 お値段およそ6億円で、図面の建物以外に、庭には広い温水プールもある。青く茂った芝生は日本離れしていて、「東南アジアのどこかにある富豪の別荘」と言われてもしっくり来るが、所在は東京都の青梅(おうめ)市だ。

 広々とした庭に限ってはえらく開放的なのだが、高い塀を張り巡らせていて、外界とは完全に隔絶されている。実際に周囲を歩いてみたものの、物件内部の様子はちっともわからず、まるで軍事基地のような存在感を醸していた。

ADVERTISEMENT

 この“リゾート”戸建ては、湖畔でも海岸でもなく、住宅街のど真ん中に建っている。「東京都内の閑静な住宅街」と言えば聞こえはいいが、実際は都心部から離れた田舎町であり、公共事業を別とすれば、何億円というお金が動くことはほとんどないような場所だ。

 周辺住民に訊いてみたところ、「昔はグラウンドだった」「あそこは医者の別荘だ」という話だが、築浅のまま売りに出た理由は判然としない。全面を塀で囲うという尖った設計思想に関しても、その事情はナゾのままだ。

 また青梅市といえば、2018年7月に東京都内としては初めて気温40℃を記録した「暑い町」としても知られる。明治時代を迎え、高温多湿を嫌う欧米人が日本にやってくるようになった際も、青梅は避暑地に選ばれなかった。

小泉八雲の編纂した怪談として有名な「雪女」がいるとされるのも青梅市内である。物件近傍「調布橋」のたもとには、雪女伝説の発祥を記念するモニュメントがある。

 問題は夏だけではない。冬には気温が氷点下となり、年によっては水道管が凍結したりと、寒さにも難儀する地域なのである。

 総合して、別荘が建つにはあまりにも不自然な立地であることが“ナゾ”を深めている。贅を尽くした魅力的な物件ではあるのだが、いくら工夫したところで、赤道近くの島と雪女の町は違うのだ……。

中古バスで作った書斎、築60年洞窟付きのアトリエ…“足し算の発想”で生まれた「ナゾの間取り」

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー