文春オンライン
中古バスで作った書斎、築60年洞窟付きのアトリエ…“足し算の発想”で生まれた「ナゾの間取り」

中古バスで作った書斎、築60年洞窟付きのアトリエ…“足し算の発想”で生まれた「ナゾの間取り」

note

草食系男子向け!? 「家族付き」のモデルハウス

 

 住宅メーカーのモデルハウスを訪れるのは、たいていが所帯持ちである。それもそのはず、一人暮らしを続けるのに、わざわざ家を新築しようとは思わないからだ。

 いっぽう21世紀の日本では晩婚化が進んでおり、30代の独身者も多い。そんな状況に注目したハウスメーカーが“実験的モデルハウス”を作って話題になった。2019年秋のことである。

 なんとこのモデルハウスには、「妻と娘」が付属する。内見に訪れて玄関のドアを開けると、見ず知らずの女性と女子小学生が「おかえり」と出迎えてくれて、いわば“モデル家族”を見せる形。1日限りの“家族ごっこ”を提供しつつ、物件をセールスしようというのだ。

ADVERTISEMENT

 間取り図を見ると、核家族の暮らしを想定した常識的な一戸建てになっていることがわかる。「土間・坪庭」はゆとりある生活を演出するし、プライベート空間としての書斎も用意されている。3人家族で暮らすには最適な間取りだが、親世代と同居するのは難しそうだ。

©iStock.com

 もちろん、この会社から戸建てを買ったところで、妻や子どもが本当に付いてくるわけではない。これらはすべて購買意欲を煽るための仕掛けだが、ハウスメーカーが家族構成まで提案するのでは主客転倒の感もある。ここはあえて「逆転の発想」と言うべきかもしれないが。

 ところでこの「家族付きモデルハウス」は、「妻」が出演することからもわかるように、独身男性を主なターゲットとした企画になっている。

 この国で「男女共同参画社会」が謳われるようになって久しいが、ローンを組んで家を買うのは、まだまだ“男の役割”とされているようだ。実際のところ、男の稼ぎだけでローンを払い終えるのは難しい時代ではないかと思うのだが。