年度の変わる4月といえば、引っ越しのシーズンでもある。新生活を前にして、「つい最近、住宅情報サイトと格闘した」という方も多いのではないだろうか。

 住宅情報といえば、どうしたって切り離せないのが「間取り図」だ。この頃は「間取り図を眺める趣味」が拡大していると見え、YouTubeでも「間取り」にフィーチャーした動画が好評を博している。

 そこで今回は、珍物件の実地検証を行うYouTubeチャンネル「ゆっくり不動産」の運営者に、過去に取材した「ナゾの間取り」について尋ねた。

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37畳超リビングの家の「内風呂」?

 

 福岡県内の都市部に所在するこちらの物件は、築55年の高層ビルの一室である。間取り図を見ただけでは居住用にはとても見えないが、あくまでも居住用として貸し出されている。

 37.2畳という巨大な部屋が目を引くが、それ以上にぎょっとするのが浴室の位置である。なんとこの物件では、一度玄関を出て共用廊下を経由しないと、風呂場に立ち入ることができないのだ(浴室が共用というわけではない)。

 昭和中期以降に日本の住宅に定着したのが「内風呂」である。しかしこちらは「内風呂」と言えるか微妙なラインだ。

「元は製薬会社の自社ビルだったものが、居住用にコンバージョン(用途変更)されてこうなったそうです。ただ、浴室がなぜこの位置なのかはナゾです。水回りの配管が理由かと思いますが……」(ゆっくり不動産、以下同)

「ゆっくり不動産」チャンネルの動画「【変わった間取り】オフィスを住宅に改装した巨大メゾネット1LDKを内見!」より。給湯室のようなキッチンの存在感が異質で面白い。

 面積的な余裕は絶大である。ウォークインクローゼットとされている部屋があるが、ここも人がひとり暮らせるくらいの広さだ。階上の洋室だって広々としていて、書斎にするのもいいし、もちろん寝室にしてもいい。士業の事務所兼住宅にうってつけだが、トイレは1室だけなので、従業員や来客が多いと困ることもありそうだ。

 オフィスビルを住宅仕様に改装した痕跡は各所に見て取れる。たとえばキッチンは、まるで木箱を押し込んだかのような造作になっている。人気のオープンキッチンとは真逆で、調理場とリビングが隔たっており、まるで会社の給湯室のようだ。

 逆に、元オフィスビルならではのメリットもある。採光に関しては言うことナシだし、それ以上に嬉しいのが、モダニズム建築の壮麗な外観である。「築55年」を魅力として味わえる物件はそう多くない。