その「回遊性」に関して、極めつけといえるのが寝室のクローゼット。こちらはウォークインクローゼット……ではなく、ここを通して部屋を行き来できる、いわば「ウォークスルークローゼット」になっている。
「この物件はオーナーが、賃貸に出す部屋を“実験的に”リフォームしてみたそうです。本人が住むわけではありませんが、こんなふうに作ったら人はどう使うのか、というのに興味があったそうで」
家賃は8万円ほどで、すでに借り手が付いているという。仲睦まじいカップルにピッタリの間取りではあるが、結婚して子どもも生まれれば、ここに暮らし続けるのは難しそうだ。
「子どもができたら引っ越せばいいんですよ。それが賃貸の良さです。ライフスタイルに応じて、こういう“普通じゃない”物件も選べるというのが面白いですよね」
市松模様のコンクリート…単身者向けの「愛猫住宅」
ネコ専用の通路や出入り口を擁する「ネコのための家」があることは以前にも紹介した。そちらは4人か5人の家族を想定した間取りだったが、なんと単身者向けにも「愛猫住宅」が存在する。
特徴的な螺旋階段の脇には、高いところが大好きなネコのために立体的なキャットウォークを整備。居室のドアには猫専用の入り口もある。吹き抜けの階段部は日当たりも良く、ガラス越しに日を浴びるネコの愛らしい姿を楽しむことができるだろう。
階段を上がれば浴室があり、ネコを眺めながら優雅に入浴できるようになっている(機嫌にもよるが)。トイレも上階にあるため、ネコ用トイレを置くのは洗面脱衣所がいいかもしれない。
なお、吹き抜けの天井にはプロジェクターが備えられており、ブラインドを下ろせば入浴中に映画を観られるようになっている。遊びが多い部屋だが、驚きなのはその建築構造だ。
「この建物、今は5部屋の集合住宅なんですが、壁面のパネルをくり抜く形で改装できるんです。だからオーナーさん次第で、将来的に大きな一戸建てとして使ったり、大きなバルコニーを設けたり……。自由自在なんですよ」
鉄筋コンクリート建築だが、壁式構造を採用し、内部には柱がまったくない。市松模様の床面も、軽量化やコスト減に役立っているのだという。面白いだけでなく、合理的な仕掛けになっている。