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東海道線に107年ぶりに誕生する“ナゾの新駅”には何がある? 白亜の建物、巨大な更地…

2021/03/18
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白亜のビルが立ち並ぶ巨大施設「サイエンスパーク」

 このTSUTAYAも、かつてはJR貨物がフランチャイズ運営をしていたらしく、その当時は看板にJRのフランチャイズ経営を示す「JRF」の表記がなされていたという。

 では、この貨物駅はなんのために設置されていたのかというと、隣接する武田薬品工業の湘南工場や、神戸製鋼の藤沢事業所などに資材を運んでいたようだ。

 武田薬品の湘南工場は2006年に閉鎖。その跡地には新たに研究開発所が設立され、現在は「湘南ヘルスイノベーションパーク(湘南アイパーク)」という名称の施設になっている。

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付近の雰囲気とは馴染まない、近代的な佇まいの「湘南ヘルスイノベーションパーク(湘南アイパーク)」。休日だったせいか、人影はほとんどなかった。

 「湘南アイパーク」は、白亜のビルが何棟も立ち並ぶ巨大施設で、ゲートあたりから中を覗くと、静かに水を湛えた貯水池があり、桜並木もみえる。

 外からでは何をやっている施設なのかまったくわからないが、サイトをみると「2018年4月、武田薬品工業株式会社が湘南研究所を開放することにより設立された、企業発のサイエンスパーク」と説明されている。

 さらに「製薬企業のみならず、次世代医療、AI、ベンチャーキャピタル、行政など、幅広い業種や規模の産官学が結集し、エコシステムを形成することで、ヘルスイノベーションを加速する場となることを目指しています」とあり、様々な企業の研究所が共同で入っているようだ。

神戸製鋼の藤沢事業所。看板をみるといくつかのグループ会社が入居しているようだが、外からは何を作ってる場所なのかはわからなかった。

「地元で喜んでる人は少ないんじゃないかな」

 この湘南アイパークに対し、線路を挟んだ反対側に立つ神戸製鋼の藤沢事業所は現在も操業中。

 村岡新駅は、この2つの巨大施設に通勤する客を取り込むというのが第一の狙いだと思われる。

牧歌的な雰囲気が漂う市民農園。男性の話によると、市が地主から土地を借り上げ、市民に開放しているのだという。

 神戸製鋼付近を歩いていると、藤沢市が運営する「市民農園」があった。そこで、土いじりをしていた男性に話を聞いた。

「新しい駅ができるっていうのは聞いているよ。この3月に説明会が開かれるというけど、具体的にどういう計画なのかはわからない。地元で喜んでる人は少ないんじゃないかな。この農園もなくなっちゃうかもしれないしね……」

 70代で、このあたりで生まれ育ったというが、新駅にはあまり興味が無さそうだった。