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 ところが、中学1年になって、母親がエホバの証人を離れつつあることがわかると、視力はたちまち回復し、1.0になった。

 急激な視力低下は統一教会の子、ヤマギシ会の子にも見られる現象である。

視力低下も腫瘍も「やめると良くなった」

 自分はもともと暗い性格ではないというだけあって、インタビューに慣れてくると、恵美の表情は次第に豊かになっていった。恵美がおかしそうに話す。

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「視力の低下は脳に原因があるのではないかと疑った母は、私を医大付属病院に連れていったんです。検査したところ、良性だったんですが、腫瘍が見つかりました。腫瘍と視力の関係ははっきりしなかったんですが、中学2年になってもう一度検査をすると、腫瘍がなくなっていた。視力の回復といい消えた腫瘍といい、エホバの証人をやめると良くなる。変な話ですよね」

 父親はこの間どうしていたのか。

「父はそれほど熱心な信者ではありませんでした。集会に行くのを躊躇していると、『行かないと、離婚だよ!』って母が脅すので、しぶしぶ参加していたような感じでした。それに、会社の仕事が忙しく夜は遅かったし、今もそうですが、単身赴任で家にいない時期も多かった。だから、私と母との関係についてはよくわからなかったと思います」

©iStock.com

 エホバの証人で多いのは、専業主婦だった妻が伝道訪問を受けたのをきっかけにエホバの証人となり、夫もそれにしぶしぶ付き合うというパターンである。子どもを巻き込むことに反対する父親は少なくないが、この教団がやっかいなのは徹底した二元論をとっているため、たとえ夫であれ反対する者はサタン的ということになって、話し合いはどこまでいっても平行線、夫が妥協しなければ最後には離婚となる。信者の脱会活動を行っているウィリアム・ウッドが入手した岐阜県の「美濃加茂会衆」のリストには、70人中15人に「夫が反対」「猛反対」「別居中」の記載があったという。これを全国にあてはめると夫に反対されている女性信者は4万5000人にも及ぶ、とウッドは推測している。また、大学生の藤林輝の調査によれば、宗教関連の離婚請求訴訟は過去20年間に「判例タイムス」などに公表されたものだけで14件あり、そのうち8件は原告・被告にエホバの証人が絡んでいた。