「震えるぐらい痛かった。今でもあの痛さは覚えている。それからですよ、会衆内でミシンベルトが流行るようになったのは。おふくろが自慢そうに効果があったとみんなにしゃべったもんだから。あとでみんなに聞くと、僕は会衆内で懲らしめ第2号だったそうです」
ムチ打てない人は「子どもをサタンから守れない人」
このときから、30数年間もの長きに渡って懲らしめが続いてきたのである。
東京理科大非常勤講師でセラピストの服部雄一の調査論文「エホバの証人の児童虐待」(98年)は、39人の元信者(元研究生を含む)を対象にアンケートと聞き取り調査をまとめたものである。
それによれば、39人の元研究生・信者のうち実に90%が子どもを叩くように教えられ、80%が集会などで体罰を目撃し、85%が周囲から叩くように圧力を受けていた。ある人がかわいそうだとムチを打つのをためらっていると、周囲から「霊性が低い人、子どもをサタンから守れない人」と陰口を叩かれたという。
私が直接会って取材した元二世は14歳から43歳までの9人である。程度と頻度を別にすれば、智彦や恵美を含め8人(率にすれば90%)までが、3人は父親、5人は母親に、殴られていた。そのうち4人は、本人たちの弁によれば「それほどひどい殴られ方はされていません」という。「ミシンの革ベルトで2回」、「木のハンガーで数回」、「竹の定規で数回」、「プラスチックの布団叩き、竹の定規で1、2カ月に1回ぐらい」。私からすればひどいと思うが、本人たちがそう思わないのはほかの二世と比べてのことか、それともそれ相応の悪いことをした(戒律を破った)から叩かれても当然という気持ちが心のどこかに残っているからなのか。
エホバの証人の親たちの多くが子どもに暴力を振るってきたのは間違いない。
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